2018年11月14日水曜日

日大悪質タックル事件に思うこと(その2)

日大・内田前監督ら立件見送りへ 警視庁、危険タックル指示なしと判断

11/13() 5:00配信 産経新聞
 日本大アメリカンフットボール部の悪質反則問題で、警視庁が、傷害罪で刑事告訴されていた日大の内田正人前監督と井上奨(つとむ)前コーチについて、宮川泰介選手に対し相手を負傷させる危険なタックルをするよう指示した事実は認められないと判断したことが12日、関係者への取材で分かった。警視庁は近く刑事告訴に基づき傷害容疑で2人を書類送検するが、東京地検立川支部は2人の立件を見送るとみられる。
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この問題、当初から私も関心を持っていたが、一応公的にはこれで決着がついたということなのだと思う。「立件見送り」は「裁判になっても有罪にできるだけの証拠がない」という意味で、「やっていない(悪質タックルの指示はしていない)」という意味ではない。真相は本人(監督)にしかわからないので、依然として藪の中である。

裁判の原則は、「疑わしきは罰せず」。黒であれば有罪だが、グレー(疑わしい)では有罪にはならない。グレーにも「限りなく黒に近いグレー」と「限りなく白に近いグレー」があるが、白であるかどうかは、本人の心の中がわからない以上わからない。今回警視庁は、「捜査1課の殺人事件担当や課内のアメフット経験者、競技場を管轄する調布署員らからなる特別捜査チームを編成。アメフット部の関係者や競技の専門家ら約200人から事情聴取したほか、試合を複数の角度から撮影した動画を解析。記者会見などでの関係者の発言についても裏付け捜査を行った。」とあるからかなり調べたようである。その結果、「限りなく白に近いグレー」と判断したというわけである。

監督本人の心の内はわからないから、限りなく状況証拠を集めるようとしたであろう。日頃の言動や試合当日のチーム内の雰囲気など、約200人もの人に話を聞けば事件の真相も浮かび上がってくるのではないかと思う。その結果、「潰せ」という監督の指示は、「ルール内で潰せ」という意味だったと判断されたのだと思う。学生時代からラグビーをやってきた身としては、その結論の方が納得できるものであり、しっくりとくる。ルールを越えた意図的な反則は、試合崩壊も覚悟しないと指示できないだろうし、そこまでやる意味があったとは思えない。その感覚は、ラグビーやアメフトをやったことのない人にはわからないのかもしれない。

それにしても、よくわからないのがタックルした選手本人の胸の内。聞けば日本代表候補にもなっている優秀な選手。そんな優秀な選手が、監督の指示の真意がわからなかったのかという疑問。私も若い頃は相手を怪我させてやろうと思ってプレーしたこともあるが、一度として「ルールを越えてやってやろう」などと思ったことはない。たぶん、それはすべてのプレーヤーに共通した感覚だと思う。相手から文句を言われたとしても、「プレーの中でなら」自分を正当化できるし、そもそも相手も文句をぐっとこらえるだろう。そういうものだと思っていたので、安易にルールを越えてしまったその思考回路が理解できないのである。今の若者ってそれほど理解力が衰えているのだろうかと思ってしまう。

それにしても、事件当時のマスコミ報道で、監督はすっかり悪人扱い。冒頭のニュースを見ても、「裏で圧力をかけたのではないか」とか、証拠が出てこなかっただけ(「限りなく黒に近いグレー」)というイメージを語る人が私の周りにもいた。たかだか日大のアメフトの監督が警視庁に手など回せるはずもなく、やっぱりこれらはマスコミ報道の悪影響だと思う。別にこの監督と知り合いでも何でもないから肩を持つつもりなどないが、やっぱりマスコミ報道って酷いなと改めて思う。

事実、いつ自分がこうした「悪質報道」の犠牲者になるかわからないわけである。一旦、「黒」と判断されたら(あるいはその方がネタになると判断されたら)、それに沿って報道されるわけである。今回も監督を支持する人たちが実はいたようであるが、そんな声はほとんど聞こえてこなかった。弁明しても言い訳としか解釈されないだろうし、説明すればするほど泥沼にハマる気がする。今に始まったことではないが、まったく恐ろしいことである。

マスコミには、両サイドからの報道が望ましいと思う。すなわち、選手側からの報道と監督側からの報道である。そうすれば、見ている方も公平に判断できるだろう。だが、今のマスコミを見ていると、そんなことは欠片も期待できそうもない。コメンテーターもみんな右へ倣えだ。せめて自分だけは冷静に判断できるようにしたいと思うが、その場合は「悪役側」に立って見ることが必要であろう。悪役側から見て言い訳の余地がなければ、本当に悪役なわけで、言い訳の余地があるならその可能性も考えて批判のブレーキを踏む必要があるだろう。

 今の日本の「集団としては無能なマスコミ」に多くは期待できないから、せめて自分だけでもそういう冷静な目を持っていたいと思わされた一件である・・・




【本日の読書】
 
    
   
   

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