〔 原文 〕
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王孫賈問曰、與其媚於奧、寧媚於竈、何謂也。子曰、不然。獲罪於天、
無所祷也。 |
〔 読み下し 〕
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王孫賈問うて曰わく、其の奥に媚びんよりは、寧ろ竈に媚びよとは、何の謂いぞや。子曰わく、然らず。罪を天に獲れば、祷る所無きなり。
【訳】
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「奥の神様にこびるよりは、むしろ竈の神様にこびよ、ということわざがございますが、どうお考えになりますか」
先師がこたえられた。
「いけませぬ。大切なことは罪を天に得ないように心がけることです。罪を天に得たら、どんな神様に祈っても甲斐がありませぬ」
先師がこたえられた。
「いけませぬ。大切なことは罪を天に得ないように心がけることです。罪を天に得たら、どんな神様に祈っても甲斐がありませぬ」
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論語も人によって微妙に解釈やニュアンスが異なる。中国の、それも2,500年も前の言葉だからいろいろと言葉も変わるだろうし、本当の意味がどうなのかはわからないのかもしれない。ここでは「罪を天に得る」と解釈しているが(それもわかるようなわからないような解釈だ)、別の解釈では奥の神様を王(皇帝)とし、竈の神を陪臣として、名目上の実権者(王)よりも実質上の実権者(陪臣)に媚びを売るとしているものもある。どちらが正しいと言えるほど知識もないので好きなように考えるとする。
いずれの解釈に対しても、王孫賈の問いかけに対し、孔子は「そんなこと考える必要もない」と答えている。それはそうだろうと思う。神様なのか、陪臣なのかはともかくとして、「どちらがいいのか」と選択する時、そこには「計算」が潜んでいる。「どちらの神様の方が願いを叶えてくれるのか(奥に鎮座する偉い神様か食事を司る現実的な神様か)」、「名目上と実質上とどちらの実権者についた方が得なのか」、計算とも打算とも言えるが、その根底にあるのは損得勘定である。
質問した王孫賈も、ひょっとしたら「どっちにつくか」で迷っていたのかもしれない。よく企業ドラマなどで、「専務派」と「常務派」に分かれて権力闘争をし、敗れた方が一掃されるというようなことをやっていたりする。子分にとっては、どっちにつくかが死活問題なのであるが、幸いにしてそんな子分の立場の悩みを味わうこともなくこれまでやってこれたが、世の中的にはそういうのも結構あるのだろうかと思ってみたりする。政治家の派閥なんかでは今でもありそうな気がする。
もしも自分が子分の立場だったらどうするだろうと考えてみる。個人的にそういう考え方は好きではないから、「専務派」にも「常務派」にも組しないと思う。そういう考え方自体、否定したいと思うクチである。まぁ、そういう議論をすれば誰でもそうかもしれない。そして実際、そういうケースでどちらかを選ぶ人というのは、「選ばざるを得ない」状況に置かれているのかもしれない。
では、選ばざるを得ない立場になったら自分はどうするだろう。
もしも選ばなければならないとすれば、その基準は「人柄」だろうか。どちらについた方が将来的にメリットがあるだろうかとか、本当の打算的な基準では選びたくないと思う。なぜなら打算で選んだ場合、どちらにつくにせよ、それが「ハズレくじ」であった場合には、あとには後悔しか残らないからである。ところが「人柄」で選んだ場合なら、「ハズレくじ」でも「まぁいいや」と思えるだろう。そういえば自分も就職の時、万が一会社が潰れたとしても誘ってくれた先輩と一緒ならいいや思ったし、転職の時もこの社長と一緒ならもしも潰れてもいいやと思って決断したものである。
逆に自分がボス猿の立場だったらどうだろうかと考えてみると、やはりライバルに打ち勝った後は、自分についてきた者を優遇しようと自然に思うだろう。ライバルを支持していた者たちに恨みは持たないと思うが、どちらかを昇進させるか選べる立場となった時はやっぱり自分の派閥から選ぶと思う。そう考えれば、子分たちがどちらにつくかで必死になるのも分かる気がする。
ただ一方でもしも中立を守った者がいたらとしたら、自分なら敢えて彼(彼女)を選ぶかもしれない。もしかしたら普通の人は選ばないかもしれないが、自分としてはそういう反骨精神を持っている者は基本的に好きである。何れにしても、理想論はともかく、人は奥の神様か竈の神様かと悩むものなのかもしれない。悩むのは良いと思うが、自分としては一度これと決めたら腹を括って信じ切り、ハズレたらサバサバと諦めるのが潔くていいように思う。そういう確固とした信念を持っていたいと思うのである。
打算など打ち捨て、自分の揺るぎない信念でこの人と選び、選んだら何があっても動じず迷わず行く。
かくありたいと思うのである・・・
【本日の読書】
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