事業をやっていて、利益を出すことは重要なことである。
何せ利益を出さなければ事業は存続できないし、それはすなわちそこに携わる者も食べていけないということになる。
あまりにも当たり前すぎる理屈ではあるが、問題は「利益を出すのは難しい」ということである。
世の中、ビジネスチャンスはいたるところに転がっている。
利益を出すのは、それをただ単に拾えばいいだけのことで、実は簡単なこと。
問題は、それを拾おうとするライバルが多いことだろう。
新しい事業ではそうではないかもしれないが、既存の事業、特に我が不動産業界には当てはまる真実である。
3月決算の当社も、そろそろ来期の計画を練り始めている。
新しい物件を購入し、一部採算の悪い物件を代わりに売却しようとして資産の見直しをし始めた。
ところが、ある物件の簿価の高さが目に付いた。
なぜこんなに高いのだろうかと疑問を呈したところ、もともと4区画の物件であったところ、先に売却した3区画で利益を出すために簿価を残りの1区画にしわ寄せしたのだとわかった。
つまり、簡単に言えばこう言うことだ。
もともと1億円で買った土地を4区画に区分して、家を建てて3棟売却した。
土地は4区画だから、1区画あたり2,500万円である。
土地部分を3,000万円で売れば500万円の利益が出る。
ところがこれを簿価2,000万円として申告して売った。
売値は3,000万円で変わらないから、単なる帳簿上の操作であり、ここで500万円分余計に利益を捻出したわけである。
その結果、1億円のうち2,000万円×3=6,000万円が売れたことになる。
残りは4,000万円だ。
しかし残っているのは1区画だけである。
3,000万円で売れば、1,000万円の損が出る。
もちろん、トータルでは損は出ていない(3,000×4=1億2,000万円)のであるが、足元が苦しくて利益を先に出してしまったが故に、そのツケが回ってくるのである。
また別のマンションの例では、簿価に占める土地の価格が高いものがあった。
尋ねてみれば、「消費税を抑えるために、建物部分の価格を低くした」と言う。
マンションを買う時には、土地部分いくら、建物部分いくらと内訳を申請する。
消費税は建物部分にしかかからないから、同じ5,000万円のマンションでも、建物部分の割合が少なければそれだけ消費税が少なくて済む。
しかし、建物部分は減価償却ができるから、保有期間が長くなれば償却が進み、その結果簿価が下がって売る時には利益が大きくなるが、土地部分が大きいとそうはいかない。
売っても(よほど値上がりしていれば別であるが、しばしば売りたいのはそういう物件ではない)利益は出ない。
銀行員時代から、小手先の下手な帳簿操作は後で首を絞めると取引先には戒めてきたが、改めてそれを実感している。
そんなことをして表面上の利益を出しても、実力が伴わなければ意味はないし、後で帳尻を合わせることになる。
と言っても、合わせるどころか、帳尻はマイナスにブレて合わないことが多い。
東芝の不正会計事件がそのいい例である。
(もっとも我が社の操作は一応合法で不正会計ではない)
「そうは言っても今期は利益を出さないわけにはいかない、赤字は出せない」
そういう言葉は銀行員時代幾度も聞いたが、結局そうして無理やり正当化してみても、あとで状況は確実にもっと悪くなる。
歯を食いしばっても、正しく処理するべきなのである。
さて、そうは言っても、過去から続く現状は変えられない。
利益状況を見ながらだけど、売るべきものは売らないといけないだろう。
今後は正しいやり方を貫いていきたいと思うところである・・・
【本日の読書】
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