【原文】
子曰、師摯之始、關雎之亂、洋洋乎盈耳哉。
【読み下し】
子(し)曰(いわ)く、師摯(しし)の始(はじ)め、関雎(かんしょ)の乱(おわ)りは、洋洋(ようよう)乎(こ)として耳(みみ)に盈(み)てるかな。
【訳】
先師がいわれた。
「楽師の摯がはじめて演奏した時にきいた関雎の終曲は、洋々として耳にみちあふれる感があったのだが」
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論語と言えば、孔子の言葉を伝えたものであり、それは人生訓のような固い話という感覚があったが、よくよく見ていくと今回の言葉のようにその時々の感想のようなものもかなり含まれている。そして音楽に関して言及するものも多いように感じる。当時の中国音楽がどのようなものだったのかわからないが、今も中国独自の琴によるものだったのかもしれないと思ってみる。中国の音楽と言えば、今でも映画『ラスト・エンペラー』を観た時に背景に流れていたテーマ曲が脳裏に流れる。そんな感じであったのであればここに書かれている孔子の気持ちも何となくわかる気がする。音楽によって気分が変わるのはよくある事。その昔、小学校時代は運動会で『天国と地獄』の曲が流れると妙な緊張感に包まれたものである。それは強烈な思い出だったらしく、今でもこの曲を聞くと、徒競走で順番を待つ間のあの緊張感が蘇ってくるほどである。プロレスでは、レスラーごとに入場曲が決まっており、その曲とともにその選手が入場してくると高揚感に包まれる。特にビッグマッチとなるほどその高揚感は大きくなる。映画やドラマでも背景に音楽があるのとないのとでは大違いである。
その昔、父親が映画音楽やムード音楽が好きでよくレコードを聞いていた。私も何となくそれを聞いていたので、今でも映画音楽は好きなジャンルである。哀愁のこもった『ゴッド・ファーザー』や雄大な砂漠を背景とした『アラビアのロレンス』、『ドクトル・ジバコ』、『太陽がいっぱい』、『パピヨン』、『荒野の七人』、『大脱走』など70年代の名画の音楽が入ったレコードをよく聞いていた記憶が今でもある(まだ実家にあるかもしれない)。考えてみれば、私の映画好きの原点はそこにあるのかもしれない。
小学校5年生の時に初めて映画館で洋画を観た。それまでは「東映漫画祭り」という子供向け映画専門であったが、そこから本格的に映画デビューしたと言える。記念すべき第一作は『ジョーズ』だったが、ジョン・ウィリアムスによるテーマ曲も強く印象に残った。ジョン・ウィリアムスはその他にも『スター・ウォーズ』、『スーパーマン』、『未知との遭遇』、『インディ・ジョーンズ』、『ジュラシック・パーク』、『E.T』など、私が夢中になって観た映画音楽をことごとく作曲していて、好きな作曲家の筆頭である。
今はハンス・ジマーだろうか。意識したのは 『パイレーツ・オブ・カリビアン』だったが、『ダークナイト』シリーズや『インセプション』、『インターステラー』など、音楽が印象的だった映画のエンディングで作曲者をチェックしていて気づいたのである。その後、調べてみたら 気がつかなかっただけで、『レインマン』や『ブラック・レイン』、『クリムゾン・タイド』、『シン・レッドライン』、『グラディエーター』、『ブラック・ホーク・ダウン』など強く印象に残っている映画も手がけているとわかり、ファンになっている。
学生時代、ラグビーの試合(特に公式戦などの大事な試合)前にアントニオ猪木の入場曲『イノキ・ボンバイエ』を聞いてから家を出ていた。戦意高揚と言えば大げさであるが、こういう勇ましい系の音楽を聴くと確かに気持ちは上がる。スポーツ選手でも試合前に音楽を聴くというのはよくあるみたいで、それが戦意高揚なのか平常心の維持なのかはよくわからないが、目的によってそれにあった曲を聴くのだろう。片思いに苦しんでいた時は、毎晩寝る前にブライアン・アダムスの『アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー』を聴いていたのを思い出す。
自分の結婚式では打合せの時にキャンドル・サービスで入場の時から流す曲を自由にできると聞いて、入場曲だけリクエストした(残りは妻の選曲である)。ありきたりのウェディング・マーチだけは絶対に嫌だったので、いろいろ考えてエルガーの『威風堂々』にした。あれは今でもベスト・チョイスだったと思う。式に列席いただいた方がどう思ったかは知らないが、1人の友人からは「リクエストしたのか?」と聞かれた。好意的な質問と捉えたが、何より当の本人はいい気分で臨めたのは確かである。
最近は、家の周りの雑草取りや大掃除の際に音楽を聴きながらやっている。それは気分高揚というものではなく、「嫌な作業をやる時間」を「好きな音楽を聴く時間」に変えていると言える。それはもっぱら「歌」系であるが、それも音楽の効能かもしれない。孔子の時代からは音楽(楽器)もだいぶ進化しているし、孔子が今の音楽を聴いたらどんな感想を持つのだろうかとちょっと想像してみた。『スター・ウォーズ』のテーマ曲を聞かせたらさぞ驚くであろう。音楽という面でも今はいい時代だと改めて思うのである・・・
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javier dumontによるPixabayからの画像 |
【本日の読書】


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