2023年7月12日水曜日

高校野球観戦

 

 猛暑の中、夏の甲子園大会の東京予選を観戦に行ってきた。スポーツ観戦と言えばラグビー以外はあり得ない私が、わざわざ高校野球の観戦に行ったのは息子が高校球児であるからに他ならない。母校が何年か前、春の甲子園大会に出場した時も、さすがにテレビ観戦はしたが、現地に行くという選択肢は端からなかった。そこには何となく高校時代から「高校野球」に対して持っていた「不公平感」が大いに影響している。「同じ高校スポーツなのになぜ野球だけが特別扱いされるのか」という不公平感である。


 それは今でも変わらない。地方予選の1回戦から新聞に掲載される、それも名前まで載る。メディアの高校野球特別視は何よりも甚だしい。まぁ、それは国民の関心度からすれば仕方ないのであるが、先週末の1回戦は駒沢球場、本日の2回戦は神宮球場という特別扱いもそうである。ラグビーの場合、1回戦などどこかの高校のグラウンドがせいぜいで、間違っても秩父宮など使わせてもらえない。「たかだか1回戦で」である。しかも一般席は「有料」である。私も大人1,000円を支払っての観戦である。


 そんな私だから、高校野球の生観戦は人生初であることにも気づく。神宮球場は当然であるが、駒沢球場もなかなか立派な球場である。こういうところで試合ができるというのは、幸せな事だなと思う。これまでは不公平感たらたらであったが、我が息子がこういう恵まれた環境で、「1回戦から」試合できるというのは良いことだなと今は思う。長年抱えてきた不公平感がようやく解消されたような気になる。そんな感慨を抱きながら、2試合ともバックネット裏に陣取る。


 試合前の練習は、両チームとも公平に持ち時間ピッタリを使って行われる。観客はまばら。ほとんどは両チームの関係者であると思うが、中には根っからのファンなのかと思われる人もいた。予選の1回戦、2回戦あたりだとまだレベル的には低いが、そんなレベルでも面白いと思うコアなファンなのだろう。地方予選の1回戦から観戦していると、本番の甲子園までの1ヶ月は楽しい期間なのだろうと思う。私もこの9月に開催されるラグビーのW杯を楽しみにしているからその感覚はよくわかる。


 レベルという話でいけば、やはりプロとは格が違う。ピッチャーの投げるボールも、打球も送球も当然ながら差がある。内野ゴロに打ち取ったと思って安堵したら、内野安打になってしまうというのが何回かあった。たぶん、甲子園クラスになればアウトになるのだろうが、まだまだそのあたりは大きな差なのだろう。ラグビーでも強豪校になれば体格から違う。わが母校も何年か前に全国レベルの高校と対戦してボロクソに負けたが、それを考えれば無理もない。


 それでも小学生の頃から見ていると、さすがに随分野球らしくなってきたなとこれも感慨深い。何せ初めて息子に野球をやらせた頃は、どうやって息子が振るバットにボールを当てようかと四苦八苦したものである。休みの日にキャッチボールをやろうと連れ出した時は、取った時に手応えのあるボールを投げるようになったのが嬉しかったものである。もう相手などしてくれないだろうが、あの時キャッチボールをやっておいて良かったなと心から思う。


 息子はチームのキャプテンである。弱小都立高校であるが、それでもキャプテンを任されるというのは、そこそこのものがあるのだろうと思う。ポジションはキャッチャー。相手チームの攻撃で、ランナーが出ると敵のベンチをじっと見ている。何をしているのかと聞いてみたら、「サインを見ている」と言う。「わかるのか」と聞くと、わかる時もあるらしい。何より、見ていること自体がプレッシャーにもなると言う。いつ間にか町内少年野球レベルの親父を超えている(当然ではある)。


 ガラガラの観客席で私の後ろの方に座っていたのはどうやら相手チームの関係者。私も両親を連れて行ったが、同じような祖父母世代もいたようである。両チームとも似たようなユニフォームで(ラグビーでは似たようなジャージの場合、どちらかがセカンドジャージを使用する)、間違えたお婆さんが我が息子チームの応援をしてしまって怒られていた。私の親も何度も孫の姿を見間違っていたからその微笑ましさはよくわかる。本日の試合は息子のチームがコールドで勝利した。嬉しかったが、どこの誰か知らないお婆さんの家族のことはちょっと気の毒であった。接戦での勝利でも良かったかも知れない。


 息子は勝利の余韻に浸る間もなく、塾へと向かう。部活も大事だが、高校3年は受験生でもある。まあ、親父も浪人したから現役合格にこだわることもないが、文武両道は小学生の頃から言い続けてきたから、しっかりこなしてほしいと思う。そしていよいよ今度の日曜日は3回戦。相手はシード校だから勝つのは難しいかも知れない。炎天下の観戦は大変であるが、息子の最後の晴れ姿であるし、しっかりと一挙手一投足を目に焼き付けてきたいと思うのである・・・



【本日の読書】

   




0 件のコメント:

コメントを投稿