『文学入門』という本を読んだ。70年前の古い本であるが、手に取ったのは自分の中に文学とやらを学んでみたかったという思いがあったからである。高校生の頃、将来の進路の候補として頭に浮かんだのが「法学部」と「文学部」(文系選択は迷いがなかった)。「法学部」は、なんとなく将来の職業として(映画の影響から)弁護士というのがあったのであるが、「文学部」はただ単に本が好きだったからというだけのことである。どちらにすべきかは、(文学部を出て食べていけるのかという)現実的な考えから迷うことなく法学部を選んだのであるが、なんとなくその時のやり残し感が残っているとも言える。
その時、漠然と思ったのは、「文学ならいつでも学べる」という感覚があったのも事実。この本を手に取ったのも、それを思い出したからとも言える。一読してそれなりになるほどとは思ったが、もう少し幅広く学んでみたいという物足りなさ感があったのも事実である。しかしながら、そもそも感じたのは、「文学とは何を学ぶのか」ということ。大学の文学部では、我が娘が文学部の心理学科に行っている通り「心理学」もあり、「哲学」もある。「哲学」は本当に大学に入って学んでみたいと今でも思うが、純粋に「文学」というとよくわからない。
古今東西の文学作品を研究するのだろうか、それとも「読み方」なのか「書き方」なのか。いくつかの大学のホームページを見てみたが、正直言ってあんまりよくわからない。ただ、『文学入門』にも書かれていたが、「読み方」などは特にあるわけではなく、そこからの「感じ方」は人それぞれによるところが大きく、「学ぶ」などという大げさなものではないように思う。それが証拠に、「直木賞受賞作品」「芥川賞受賞作品」などという謳い文句に惹かれて読んではみたものの、何がいいのかよくわからないという作品は数多くある。
この直木賞だとか芥川賞だとかという選考基準も素人にはよくわからない。表現なのか、ストーリーなのか、そのトータルなのか。『容疑者Xの献身』が直木賞を受賞したのはわかるが、なぜ『永遠のゼロ』ではないのかはわからない。同じ作家でも『暗殺の年輪』よりも『蝉しぐれ』の方が面白いと思うのに、なぜ『暗殺の年輪』だけなのか(タイミングももちろんあると思うが)。およそ「賞」となると素人の私には良し悪しは区別できない。
それは実は私の大好きな映画の世界にも言える。コッポラや黒澤明などの巨匠が創った名作を否定する気は無いが、では平凡な監督が同じ作品を撮ったらどうなるのかよくわからない。『地獄の黙示録』は確かに深い作品だと思うが、それはコッポラ監督によるものなのか、それとも脚本なのか、それともマーティン・シーンやマーロン・ブランドという出演者なのかよくわからない。『パラサイト半地下の家族』がアカデミー作品賞に輝いたが、同じ韓国映画でも『アシュラ』の方が断然面白かった。ハリウッド映画でも、「アカデミー賞受賞作品」などと言われても最近は鵜呑みにしないことにしている。
いわゆる玄人受けというのはあるだろう。スポーツでもサッカーはあまり観ても面白いとは思わないが、ラグビーはメチャクチャ面白い。それはプレーの意図がわかることもあり、簡単なようでいて実は難しいプレーというものがわかるというのもある。そうした一つ一つがよくわかるので、観て面白いと思うのかもしれない。文学も映画も、そんな玄人が観たら、実はすごいということもあっての受賞なのかもしれない。深く学べば深く学ぶほど、より深く味わえるというものなのかもしれない。
いずれにせよ、これで終わりというわけではない。学んでみたいという気持ちは強くあるし、「求めよ、されば得られん」ということもある。今後も折に触れ、文学そのものに興味を持って手を出してみたいと思うのである・・・
ComfreakによるPixabayからの画像 |
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