いよいよラグビーのワールドカップが始まった。思い起こせば日本開催が発表になったのは10年前。10年前は開催国としてどのくらいできるのだろうかと案じてが、前回は南アを破り、そして今回はアイルランドを撃破し、決勝トーナメントに進出できるかどうかはわからないが、開催国として一応恥ずかしくないレベルの成績は残しており、素晴らしいことだと思う。選手や関係者の頑張りの結果であるが日本人として誇らしく思う。
せっかくだからとアイルランド戦を観戦。友人が確保してくれた「ホスピタリティーパス」というのを利用。これはランチ付きイベントに参加し、そのあと観戦するというもの。イベントは元日本代表のアンドリュー・マコーミックを招いてのもの。まぁ、マコーミックにあまり興味はなかったが、海外ではこういうホスピタリティーパスは一般的らしく、海外からの観光客らが交じったランチはいい経験であった。
同じテーブルになったアイルランド人ご夫婦は、ワールドカップにあわせてアイルランド戦を観戦しつつ、国内を観光するのだと語っていた。アイルランドの試合は、横浜、静岡、神戸、福岡と予定されており、日程的にも資金的にも随分と余裕のあるご夫婦なのだと推察した(ホスピタリティーパスだけでも「ゴールドチケット」で1人17万円である)。世の中いろいろであるが、羨ましい限りである。
イベントが終わって会場となるエコパスタジアムへと移動する。様々な格好をした日本、アイルランド双方の応援をする人たちが溢れかえっている。熱気もうもうで、スタジアムのざわめきも雰囲気を盛り上げる一助となっている。このあたりはテレビ観戦では決して味わえない。現地で生観戦する醍醐味はこの会場の雰囲気も大いに貢献している。座席の横にはチームカラーのグリーンのスーツを着た紳士(?)のご一行が陣取っている。隣り合って自然と仲良くなる。
試合開始にあたって、双方の国家斉唱。全員が立ち上がって「君が代」から始まる。いまだに「君が代」に嫌悪感を隠さない人たちがいるが、このシーンを見たらどんな風に思うだろうかと感じる。当然ながら隣のアイリッシュご一行も立ち上がっている。試合はアイルランドが2トライを決めてリード。「やっぱり勝てないのか」と思いつつ、応援を続ける。日本がペナルティーゴールを決めて3点を返すと、隣のアイリッシュのおじさんも拍手してくれる。自分のチームは応援するが、相手への敬意も忘れないというのはいい感じである。
たまたま今はバレーボールもワールドカップをやっている。テレビでチラッと見たら日本に対する応援が過剰すぎるように感じた。当然ながら会場内には相手チームもいるわけであり、ただでさえアウェーなわけである。日本を応援したい気持ちはわかるが、行き過ぎてもいけないと思う。エコパスタジアムでも応援は圧倒的に日本の方が多かったが、そういう過剰演出はなく、さらに負けたアイルランドチームが引き上げる際、近くの日本のサポーターが盛大な拍手を送っていたが、見ていて気持ちのいいものであった(もちろん私も拍手を送った)。
隣のアイリッシュも最初は余裕だったが、後半日本が逆転して残り時間が少なくなると声を張り上げて声援を送っていた。「ヤバい」という気持ちが伝わってきて、なかなか心地いいものであった。そしてとうとうノーサイド。最後のプレーでは、なんでアイルランドの選手が蹴り出したのかわからなかったが、隣のアイリッシュもにっこり笑って握手を求めてきた。「まぁ負けたけどそれは今回の話であって、まだまだ実力はアイルランドの方が上」というゆとりのようなものがあったのかもしれない。敵味方一体となって心から楽しめたと思えた瞬間である。
今回、ワールドカップにあわせて来日する観光客は40万人らしい。その観光客が平均1週間滞在して、平均50万円を使うと想定されていて、経済効果はなんと2,000億円らしい。日韓関係の悪化から、今年に入って韓国からの訪日客が7月までで約20万人減少したらしいが、ワールドカップの開催でそれをはるかに上回る観光客が訪れるようであり、タイミングとしても良かったのかもしれない。日本には負けてしまったけれど、隣に座っていた、否、会場に来ていたアイルランドファンの人たちがみんな楽しんで帰国されるといいのにと心から思う。
【本日の読書】
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