2019年9月2日月曜日

怒ること

この頃、些細なことでよく妻と息子が喧嘩をする。大概が妻のお小言に対して、息子がキレて口答えをし、それがまた妻の逆鱗に触れると言うパターンである。いつもは2人の口論を聞き流している私であるが、先日はあまりにもヒートアップしすぎた感じがしたので、間に入ることにした。息子に対し、「ちょっと来い」と別室に連れて行ったのである。最初は渋っていたものの、私が睨みを利かせたこともあって渋々ついてきた。

別室で怒鳴られるものと思っていたのか、息子はふてくさた態度を取っていたが、私は静かに「お前の気持ちもわかるけどな・・・」と話し掛けた。息子は中学2年。背丈は私と同じであり(体重は20キロ軽いが・・・)、もう怒られるとそれ以上反抗できなかった子ども時代とは違う自信のようなものが出てきて、それで母親にも強く言い返すようになったのだろう。私にも覚えがある。てっきり怒鳴られると思っていたのに、肩透かしを食ったようで、息子もすぐに私の話に耳を傾けてきた。

私はもともと、息子が悪いとは思っておらず、従って怒るつもりなど毛頭なかった。少しクールダウンさせようと妻から引き離しただけである。そしてそもそもの発端となった些細な出来事についてどう思うか尋ねたところ、息子も自分が悪いとよくわかっていた。あとは簡単、しばし雑談したあと、息子は自分から妻に謝りに行くと言って戻って行った。そんなものである。初めから小うるさく言わなければ息子も反抗するまい。喧嘩の原因は過分にして妻の過干渉にある(もちろん、妻本人は気付いてすらいない)

およそ、中学生にもなれば半分大人である。頭ごなしに言って言うことを聞かせる年ではない。そろそろ「自己責任」を意識させて行動させるべきだと私は思う。例えば、朝何度も起こすのではなく、本人に自分で起きるようにさせるべきなのである。起きられなくて遅刻したらそれは自分の責任。怒られたくなければ自分で起きる工夫をするだろう。それを寝る時間から事細かく口うるさく言うから、双方がイライラする結果となるのである。

およそ人を怒る時、その目的は何かを意識しないといけない。私もただ甘いだけではなく、息子が何か人としてマズイことをしでかしたら雷を落とすつもりである。怒って目を覚まさせることが目的なら、本人が震え上がるほど怒ればいい。行動を促すなら牛や馬ではあるまいし、鞭で叩いても上手くはいかない。本人が自分で気づくように持っていく工夫が必要である。

それは子育てだけではなく、仕事で部下に対する時もそうである。ミスをしたから怒るのではなく、そのミスがどう言う原因なのか、どうしたら再発を防げるのか。怒ることがその目的に叶うならいいが、そうでなければ怒っても仕方あるまい。大事なことは本人が反省することであり、再発防止の意識を強く持つことであり、そのことを認識させることができることである。それができれば別に怒る必要もない。私も今の会社に来て以来、部下を怒ったことはない。

人には感情があって、それをうまく理解しないと人間関係はうまくいかないと思う。娘が将来、結婚したいという男を連れて来て、その男が親の目から見てどうにもヒドイ男だったとする。その場合、頭から反対しても逆効果である。よくドラマなどでもあるパターンであるが、反対されればされるほど余計相手の男に対する気持ちは強くなり、親への反発も強くなる。ロミオとジュリエットの悲恋も双方の親同士が対決していなかったら、そして2人の交際に反対していなかったら、あそこまでの悲劇にはならなかっただろう(名セリフも生まれなかったはずである)

私だったら、まず相手の男を歓迎するだろう。もちろん、結婚にも反対はしない。ただ、後で娘と2人っきりになった時、相手の男の気になる点をそれとなく娘に尋ねるであろう。「どう思う?」あるいは「大丈夫?」と。もしかしたら娘も気にしているかもしれないし、そうしたら自分の経験則に基づいて、どういうリスクがあるか、どういう心配な例が考えられるかを教えて一緒に考えるだろう。もしかしたら、娘も迷っているのかもしれないし、結論はわからないが、少なくとも頭から反対するよりはずっとマシな結果になると思う。

まぁ、そんなくだらない妄想が現実化して欲しくはないが、相手の心に響かせようと思ったら、強引に叩いてもダメだと思う。ポイントを掴んで静かに叩いた方が心に響き渡っていくと思う。ヒートアップしていた息子も私と話し始めて1分も経たないうちにクールダウンしていった。あそこで私が怒鳴っていたら、息子はさすがに表立って反抗はしなかったかもしれないが、心は閉ざして心の中で悪態をつきまくっていただろう。あるいは父親にまでふてくされた態度を取り、私もやむなく父親の威厳を保つためにひっぱたくくらいしていたかもしれない。

考えてみれば、怒る必要なんてそんなにないのかもしれない。それが必要なケースというのもあるだろうが、それはよっぽどのケースであり、少なくとも妻のように2日にいっぺんなどというペースはあり得ないだろう。息子が思い通りに動かないからといって怒っても息子は思い通りには動かないわけだし、気にくわないからと言って結婚に反対しても親子喧嘩の結果、親子関係の断裂などというケースになるのだろう。ロミオとジュリエットの悲劇が成り立つ所以である。
  
 そうしたところをよくよく理解し、どうやったら相手の心に響くのか、冷静に考えて工夫することが必要だろうと思う。相手を思う通りにコントロールしたいと思ったら、必要なのは怒りに任せた感情ではなく、高度な心理的テクニックなのだと思う。怒るのが嫌いな性格だということもあるが、そんなことを考えていることもあり、どうやら自分は「雷親父」「鬼上司」にはなれそうもないと思うのである・・・




【今週の読書】
 
    
     

0 件のコメント:

コメントを投稿