2018年8月16日木曜日

何が大事か

何事であれ、考えてやるということはとても大事なことだと思う。仕事であれば猶更、である。ちょっと立ち止まって、「なぜこれをやるのか」を考えてみるだけで十分違うと思う。そんなことを考えたのは、最近新しい業務の事をいろいろと考えているからでもあるが、昔のことをふと思い出したからでもある。それは銀行員時代、問題先の担当をしていた時のことである。

問題先とは、貸出をしたが、その後業績が悪化して返済が苦しくなった企業のこと。A社もそんな一社で、返済を猶予している先であった。私は担当としてA社を定期的に訪問していたが、その時点でA社向けの全貸出金は一旦すべて返済を停止し、期限を区切って様子を見ながら返済条件を見直すことにしていた。こういう時、その期限は大体3か月か6か月かにするものであった。

私は事務手続きが煩雑ゆえに、期限を6カ月にしたかったが、上司は3か月にこだわった。短ければすぐに期限が来て事務手続きも大変である。もちろん、短くしなければならないケースもあるからそれはケースバイケースであるが、A社は業績改善には少し時間がかかりそうであったので、事務手続きに手間暇を取られるより、私は社長との時間を取りたかったのである。
「これから何をしようとしているのか」
「それは効果がどのくらい見込めるのか」
「どのくらいで収益が見込めるのか」
それこそが、我々の見極めるべき大事な点で、社長の考えが甘ければ尻を叩かなければならないし、うまくいきそうならフォローしなければならない。そういう話をじっくり伺いながら、様子を見たかったのである。

 A社は、資料という点でも少し問題があった。何とか遅れ遅れで試算表は作れていたが、資金繰り表は作れていなかった。上司は特に資金繰り表を作らせろとこだわった。もちろん、試算表も資金繰り表も大事である。だけど、ノウハウが乏しくて作れないものを年老いた経理部長の尻を叩いて作らせるのもいかがかと私は感じていた。作り方を教える手間暇も大変である。もちろん、私の担当もA社だけではない。

 期限が来ると、せいぜいよくて3か月ほど前の試算表を眺め、資金繰り表はまだ作れないのかと上司は文句を言ってきた。机に座ってハンコを押している上司にとってみれば、その内容はともかく、試算表と資金繰り表という「形」が大事だったようである。どちらも「過去」である。これから業績を回復して返済を再開できるのかは、「未来」である。たくさんの仕事を抱え、効率的にやろうとすれば、どちらを優先すべきかと考えればそれは明らかである。

 ただ、上司の考えもよくわかる。とりあえず「形」が整っていれば、自分は形に沿って仕事をしたことになる。十分な資料もなく期限を延長したのでは、自分の仕事として具合が悪かったのであろう。上司もまたその上の上司の手前もある。その「形」に意味があるかどうかではなく、「形」そのものが大事だということもある。思えばそんな意味のないことがかなりあったと思う。

 そんなことはよくあるのかもしれないと感じる時がある。販促と言えば、新聞に折り込みチラシを入れるものと思い込んでいて、過去はともかく、果たして今でもそれが有効なのか考えてみない。今まで続けてきたことを同じように続けることで、免罪符を得た気分になっているのではないかと思うことは、多々ある。

 今にして思えば、大企業だからそんな「形」だけの仕事をしていても良かったのだと思う。中小企業にきてそんなことをしていたら、たちまち船がひっくり返ってしまう。そう考えれば、何より「形」を重視する上司もいないし、プレッシャーはあるがストレスのない環境は望んでも得難い良い環境だと言える。そういう望ましい環境にいることに感謝しながら、これからもそういう意識で仕事をしたいと改めて思うのである・・・




【本日の読書】
 
 
 
 

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