2026年1月15日木曜日

あぁ、コミュニケーション!

 コミュニケーションを取るのは難しいとつくづく思う。今に始まったことではないが、還暦過ぎてそれなりに人生経験を積んでいてもいまだにコミュニケーションには悩まされる。それは家族でもそうだし、仕事でも同様。コミュニケーションがうまくいかず、互いの関係がギクシャクすると、それは何をするにしても余計な神経を使うことになり、煩わしいことこの上ない。子供の頃は引っ込み思案で人見知りで、それが素の自分だと思っているが、だからよけい他人とのコミュニケーションが下手なのかもしれない。

 言葉も便利なようで不便に働く。意図した通りに伝わってくれればいいが、そうでないことはよくある。そんなつもりはないのに別の意図で捉えられるというのは今でも苦しむところである。たとえば「情けは人の為ならず」という諺がある。本来の意味は、「他人に情けをかければ、それは巡り巡って自分のためになることもあり、だから情けをかけるべき」ということだろうが、「情けをかけてもそれはその人のためにならず、だから情けをかけない方がいい」と誤解する人もいる。

 表面上の言葉だけを見れば後者の解釈も成り立つわけで、だからこそ表面的に捉えただけの人は誤解するのである。例えばかつて読んだ本の中に、「2人の囚人が監獄の窓から外を見上げた。1人は薄汚れた鉄格子を、もう1人は輝く月を見た」という言葉があった。これをどう解釈するか。鉄格子は現実を、輝く月は理想または夢を指すということはわかる。理想よりも目の前の冷たい現実を重視するのか、どんな境地にあっても常に理想を胸に抱くのか、どちらの解釈も成り立つ。

 これはこちらの解釈だと決められるのは本の著者だけだろう。そして本の著者は、現実に囚われて理想を見失うのではなく、常に星を見ろという意味で使っていたと記憶している。それはそれで自分の主張の補足として使った言葉だろうし、悪いとは思わない。しかし、現実を見ずに理想ばかり唱えるというのも愚かなことである。理想もいいが、現実問題として目の前の鉄格子(=問題)を何とかしないといけないわけであり、まずはそこに注力するのは当然である。2人の囚人のモノの見方、考え方に優劣はつけられない。

 かように著者が意図した意味とは違う解釈をされるわけである。先の諺のようにそれが1人歩きしたとしても、本来の意図をよく考えれば「情けをかけるな」という解釈はおかしいなと気づく。しかし、2人の囚人の例はどちらもそれなりに正しい。かく言う私もこの本を読んだのは随分昔であり、何となく意味を理解しているが、時間が経つとどちらの解釈だったかわからなくなってもおかしくはない。

 こうしたことが日常のさまざまな場面で起こる。何気なく言ったことが曲解される。それが曲解されたとわかれば訂正なり説明なりができるが、人の頭の中は見えない。こちらが意図した通りに伝わっていると思い込んでいたら、2人の間に見えない溝がいつしか深まっていくことになる。最近、社内で何となくギクシャク感を感じる人がいる。もしかしたら意図せぬ誤解が生じているのかもしれない。しかし、確たる証拠がないのでなんとも言えない。

 コミュニケーションには「誤解」もあるが、「言いにくい」という事もある。とあるベテランの方は、事あるごとに他人の批判を繰り返している。その批判は的外れではなく、正しい批判であると思う。されどそれを批判して終わっていたら何にもならない。かくあるべしという道を示し、改善を図るように働きかけてほしいと常々思っている。ベテランなんだし。だが、それを直接ご本人に言うのは憚られるところがある。相手がそれなりの地位にいるからなおさらである。

 それはもしかしたら私自身にも当てはまるのかもしれない。何となく違和感を感じているが、直接言いにくいので言えないでいるということもあるかもしれない。そうしたことがあるなら遠慮なく言ってほしいと思うが、相手からすれば「言えるなら言っている」というところかもしれない。それが批判であればあまり聞きたくはないが、知らずにいる方がもっと悪い。最近、とあるところから私に対する不満の声が聞こえてきた。その不満はもっともなところであり、私の対応が悪かったと反省しているところである。そうした目に見えない不満が伝わってくれば改善もできる。不満に対しては真摯に耳を傾けたいと思っている。

 コミュニケーションが難しいのは確かであるが、だからと言って忌避するのではなく、前向きに受け止めていきたい。まだまだ修業が足りないと嫌になるくらい実感する。輝く星を見上げながら、目の前の鉄格子に知恵を絞る。そんな態度でいたいと思うのである・・・




【本日の読書】
 全体主義の起原2 新版――帝国主義 全体主義の起原 新版 - ハンナ・アーレント, 大島通義, 大島かおり  日航123便墜落事件 四十年の真実 - 青山透子  潮音 第一巻 (文春e-book) - 宮本 輝  万物の黎明~人類史を根本からくつがえす~ - デヴィッド・グレーバー, デヴィッド・ウェングロウ, 酒井 隆史





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