2025年8月17日日曜日

出場辞退に思うこと

 夏の全国高校野球選手権が行われているが、先日、1回戦を突破した広陵高校が大会途中で出場辞退という異例な事になった。大会前からネットで部内のいじめ問題が指摘され、出場に疑問の声が上がっていたが、個人的には今は昔ほどでもないので辞退するべきとも思わなかった。昔は何かあるとすぐ出場辞退で、野球部員でない生徒の不祥事の責任まで取らされて気の毒であった。最近はそういう辞退をあまり聞かなくなっていたのでいい傾向だと思っていたが、経緯を見れば出場の判断はおかしいと思わないし、その後の炎上を受けての辞退もやむを得ない気もする。

 大学ラグビーの世界でも今年は関西の雄、天理大学が選手の不祥事(大麻所持)で無制限活動自粛になっている。ちょっと寂しいがやむを得まい。ラグビー部で大麻と言えば、かつての関東の雄、関東学院大学がやはり部員が大麻の所持(部屋で栽培していたとか)と吸引とで逮捕され、名物監督が辞任し、以後凋落して今では関東リーグ戦1部と2部を行ったり来たりという状況である。天理大学も同じような事になると寂しいように思う。一旦、凋落してしまうと持ち直すのも難しいのかもしれない。

 学生スポーツは卒業によって選手が入れ替わる。当然ながら毎年、新しい学生の確保が大事であるが、不祥事を起こすと有望選手は入学を避けてライバル校へ行くだろう。チームが弱くなれば、強いチームでやりたいという選手はますます敬遠するだろうし、歯車の逆回転が止まらなくなる。天理大学も活動を再開したとしても、そういう影響が出るのではないかと思えてならない。その分、新興勢力が出てくるという見方もあるからなんとも言えないが、何より真面目にやっていた学生は気の毒である。

 関東学院大学の事件からもう18年経っている。天理大学のラグビー部員も関東の事件を知らなかったのだろう。誰でも大麻を吸ってみたいという興味はあるだろうから、ちょっとぐらいという誘惑に駆られたのだろう。本人もこういう事態になるとわかっていたら絶対に手を出さなかっただろう。広陵高校の野球部員もイジメは悪い事だとは知っていただろうし、その時は自分の行為がイジメに当たるという意識もなかったのかもしれない。当然、今日の事態が予測できたらやらなかっただろう。「後悔先に立たず」というやつである。

 もしも、自分が指導者だったらどうするだろうと思う。相手は若気の至りの特権のある若者であり、監視するにも限度がある。ゆえにそこは教育しかないだろう。他校の不祥事を例に取り、ちょっとした事がどんな事態を招くのか。それを語って聞かせるしかない。今は飲酒や喫煙も厳しくなっている。私の頃は高校生でも居酒屋で酒が飲めた。今でも覚えているが、クラスで運動会の打ち上げを蒲田の居酒屋でやったものである。1人高校生が混じっているなどというレベルではない。大らかな時代であったとつくづく思う。

 痴漢もセクハラもなくなりはしないのだろうが、かなり「やってはまずいもの」という認識は世に広まっている。私の若き銀行員時代は、営業担当の課長さんにお客様だけではなく、 行内に対する営業として、女性に対してもたまにはお尻を触ってやらないといかんと諭されたものである(さすがにやらなかったけど・・・)。今はそんな事をしたら大問題になるだろうが、そういう事を気軽に言える雰囲気だったのは確かである。それで世の中は、大らかだったかつてより世知辛くなったのかと言えば、それはいい方向へ改善したという事だと思う。

 これからもルールから逸脱する若者はなくならないだろうが、指導者はひたすら教育するしかないだろう。練習だけさせるのが指導者の役割ではない。野村監督も語っていたが、「人間的成長なくして技術的な成長はない」だろうから、練習以外にも教え諭す必要があるだろう。広陵高校の辞退という事態を受けて、甲子園出場を狙える学校の野球部監督はもちろんであるが、そうでなくても、まずは指導者たる者は今回の例を採り上げて生徒に話してみるくらいはするべきではないかと思う。

 学生スポーツの場合は、何よりも勝負の前に教育があるべきであろうし、それは学業もさりながら勝負に臨む前の姿勢という事でもある。また、指導者にしてみれば「リスクコントロール」という面もある。広陵高校の監督さんは、野球部の出場選手全員から「尊敬する人」とされていたようであるが、野球以外の指導に漏れがあったのは確かであろう。私には無縁の世界であるが、指導者にしてみれば「対岸の火事」ではなく、「他山の石」とすべきであると思うのである・・・


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