2025年6月26日木曜日

ラグビーの話

ラグビーは少年をいち早く大人にし、大人に永遠に少年の魂を抱かせる

ジャン・ピエール・リーブ(元ラグビーフランス代表キャプテン)

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 先日、所属しているラグビーチームの試合のビデオを観た。私は年代が異なっていたため参加しなかったのだが、自分のいないチームの試合を客観的に観るというのも勉強になるものである。とある40代のプレーヤーだが、別のシニアチームではコーチを務めている。ラグビーが好きで何と社会人になってからラグビーを始めたらしい。コーチの資格まで取って自分より年配のシニア層にコーチしているわけであり、それなりにラグビーをわかっていると思う。しかし、その彼であるが、試合ではいいところがなかった。簡単に相手につかまりボールをロストする。タックルを振り切られて抜かれてしまう。そんなプレーが目についた。

 原因は見ているとはっきりわかる。一言で言えば気持ちが逃げているのである。ラグビーはコンタクトスポーツである。相手とぶつかり合うコンタクトのスポーツであり、そこで負けてしまうと試合では勝てない。そして相手とぶつかり合うがゆえに、気持ちの強さが要求される。バックスは相手を抜こうとするものであるが、抜けない場合はしっかり相手に当たり、そこを次の攻撃の拠点にしなければならない。それを逃げようとして捕まり、ボールを落としてしまったのである。タックルではしっかり体を当てにいっていないので走り込んでくる相手を手で捕まえる形になり、当然捕まえられずに振り切られてしまっている。

 ラグビーは単なるボールゲームではなく、相手を押しのけてボールを運ぶスポーツである。もちろん、フォワードで体を張ってボールを確保し、相手のディフェンスを崩してバックスにボールを回して抜くというものでもあるが、どのプレーヤーでも相手とのコンタクトはしっかりできないといけない。それがラグビーの真髄である。そこがクリアできれば、7割方はできたと言っても良いと思う。あとは技術を覚えていくだけであり、それはそれほど難しくはない。逆に言えば、技術だけ習得しても、コンタクトという真髄ができないと試合では苦しくなってしまうだろう。

 我がチームには社会人になってからラグビーを始めたという人が結構いる。私がそうであるように、「学生時代にやっていた人がやめられなくて続けている」というイメージがあったので、新鮮であった。「子供がやっているのに付き合っていたらやりたくなった」、「テレビで観ていて面白いと思っていて、それが高じてやりたくなった」などさまざまである。ただ、そうした社会人デビュー組にコンタクトに対する苦手意識がどうも多いように思う。それも無理からぬところはある。見るのとやるのとでは大きく違う。ましてやタックルの場合、相手が走ってくるので恐怖心が芽生えても不思議ではない。

 試合が終わるとあちこちの痛みに気付く。ぶつかり合うわけであるからそれも当然である。擦り傷も多く、シャワーを浴びる時に染みて気付くこともザラである。スパイクで踏まれたところも傷になる。雨が降っても基本的に試合はやる。さすがにシニアになってまで雨の中で試合するのはどうかと思う事もあるが、それがラグビーなので仕方がない。最近は芝生のグラウンドが一般的になってきているのでありがたいが、昔は泥だらけのジャージの洗濯が大変だったものである(昔は母親からは「自分で洗え」と突き放され、今も妻は当然洗ってくれない)。

 怪我はやはりつきもので、大きな怪我をして家族から禁止令が出て、レフリーに転向した仲間がいる。同じ理由で試合には出ない「練習限定」の仲間もいる。シニアになれば会社でもそれなりのポジションを占めているので、怪我が怖いのは誰もが同じ。会社の社長ともなれば誰にも文句は言われないが、無言のプレッシャーはあるだろう。いい年してそれでもラグビーをやめない。私もしばしびっこを引いて出社する時もある。顔にあざを作った時は治るまでバツが悪い。シニアになると怪我もなかなか治らない。

 それでもラグビーを続けるのはなぜだろうかと自問してみるが、やっぱり面白いからという事に尽きる。私の場合、コンタクトにはまったく抵抗はないし、タックルは好きな方である。ボールを持って相手に当たるのも然り。しかし、バックスに転向してからは、「触れさせずに抜き去る」事に快感を覚えており、その方面に意識は行っている。キックも絡めれば「抜く」プレーはいろいろとあり、臨機応変にこなせるプレーヤーになりたいと思っている。とは言え、鍛えれば鍛えるほど、体力の上がった若い頃と比べ、今は年々細胞が劣化していく。鍛えても現状維持がせいぜいか、そもそも鍛えるのも時間的制約があったりする。うまくなるのも限度がある。

 人間も生物である以上、老化は避けられず、年を取ると動きも鈍くなる。だからシニアのラグビーは年代別になっているのであるが、下の年代に無理して対抗しようとは思わないが、同世代では対等にやっていきたい。向上心を持って、時間をつくり、少しずつでも練習して少しだけでもうまくなりたい。まだもう少し、この痛いスポーツを楽しみたいと思うのである・・・


christianesteveによるPixabayからの画像

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