昨年から今年にかけて、随分とお金が動いた年であった。前職の退職に際してまとまったお金を手にしたが、弟が詐欺被害に遭い、弟に貸したお金が戻らなくなった。さらに前職の社長との裁判で、和解とはいうものの実質的な敗訴でさらに支払いを余儀なくされ、結局手にしたお金はマイナスになる有様である。幸い、仕事では(妻には内緒の)収入が確保できたが、マイナス分を取り戻すにはかなりかかりそうである。
それにしても、弟の詐欺被害は影響が大きい。親も私もかなりの損失を被った。親がオレオレ詐欺に引っかからないように何度も注意していたが、まさか弟が詐欺に遭って連鎖被害に遭うとは予想もしていなかった。私もおかしいとは思いつつ、何度も弟にはよく調べろと言いつつ、本格的に我が事として動いたのは自分も貸せなくなってからだった。弟という安心感と、困っているなら助けなければという思いからだが、もう少し早く動くべきであった。
なぜ人を騙してお金を手に入れようとするのか、と問うてみても仕方のないこと。それぞれにみなもっともな理由はあるのだろう。困窮してどうにもならなくなって犯罪行為に走る者もいれば、ただ単に楽して金儲けがしたいと思うのかもしれない。悪いことだとわからずにやる人はいないだろう。悪いとわかっていてもやるわけであるから、単に「悪いことをするのはやめましょう」と言って解決するものでもない。結局のところ、被害に遭わないようにするしかない。
どんな人が被害に遭うのかと言えば、一つは正直な人であり、一つは欲張りな人であろう。その昔、『銀河鉄道999』という漫画に善人だけの星が出てきた。善人だけの星なんて良い星だとは思うが、メーテルは鉄郎に教えるのである。人間は悪の心があるから相手の悪を見破れるのだと。それがなければ、相手の言葉をすべて信じてしまい、簡単に騙されるのだと。オレオレ詐欺に引っかかるお年寄りもみんな善人なのだろう。孫が困っていれば、何をさておき助けなきゃと思ってしまうのだろう。
弟の場合は、欲をかいた結果である。フィリピンの友人に誘われてリゾート地を購入。その時はささいな金額で、弟も万が一にも損してもいいと考えて投資したそうである。それが政府による収用の対象になったと説明され、必要な費用だと説明して少しずつ送金していき、そろそろいい加減にしてほしいと思い始めたところで、今やめると投資した分が無駄になると説明され、もったいないからと注ぎ込んでいったそうである。外国の話でもあり、日本ではおかしな話も仕方ないのかと思わされたところもある。
途中、弟は親と私にフィリピンで買った別荘が10倍の価値になったと得意気に説明し、それを聞いた私も羨ましいと思ったものである(もっとも、私には基本的に現地を簡単に見に行けないところの土地には手を出さないという信念がある)。弟もおかしいと思って現地にいったが、相手は友人に頼んで金融機関や政府機関の人になりすましてもらうという手の込んだ芸当も披露したらしい。
結局のところ、昔から「上手い話にはウラがある」という類のものであり、後から騙されたと怒ってみても仕方がない。私は私で、もう少し早く一緒になって手を打っていれば良かったと反省しているが、その分、弟には文句を言うこともなく、積極的に後始末に協力している。何せ数千万円の被害であり、破産寸前で自宅も失う瀬戸際にある弟をさらに鞭打つのも憚られたところである。まぁ、将来の相続時に返してもらうことにしている。
ライプニッツによれば、悪は人間の不完全性に因由しており、悪は単なる完全性の欠如に過ぎないと言う。悪はかえって宇宙全体が善であることを悟らせるのに貢献しているのだとか。悪があることを嘆いてみても仕方がないことは確かである。それよりもやはり自衛が必要なのだろう。騙されるのを完全に防ぐのは難しい。私もいつ巧妙な手段の詐欺に引っかからないとも限らない。その際、防御手段としてはお金を出すルールを決めておくぐらいのことだろうと思う。
この先も悪はなくならない。詐欺もしかり。ただ、騙されたとしてもなるべく被害を小さくする工夫を普段からしておく事として、あとは普段の心構えで「欲の皮」型の詐欺には引っかからないようにはできるだろう。引っかかるとしても「人助け」型にしたいところである。それは何より善人である証拠であるし、それならば恥ではないと思う。私も弟にお金を貸した事自体は後悔していない。それは何より他ならぬ弟の頼みであったし、おそらく今後も頼まれれば助けるだろう(と言ってもお金はもうないが)。今回の件で兄弟仲も悪くなっていない。そこは誇りたいと思う。
「騙すより騙されろ」と言う気はないが、盾としての「悪の心」をしっかりと構え、欲の皮は弛ませておこうとは思う。騙されるにしても騙され方と被害の抑え方はしっかりと持っておきたい。そんな武装をした善人でありたいと思うのである・・・
Kevin SandersonによるPixabayからの画像 |
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