私は小学生の頃からの映画好き。父親が映画好きで、テレビでよく洋画を観ており、私も横に座って一緒に観ているうちに好きになったという経緯である。人の親となった私は、もっぱら映画を観るのは週末の深夜。子供たちが寝たあと。それだからか、私の子供たちも映画は嫌いではないが、趣味というほどでもない。改めて親の影響は大きいなと思う次第である。週末2本観れば、年間で100本。休暇や祝日の前夜もあるから、なんだかんだで昨年は142本を数えた。一昨年は166本である。
それだけ観ていても、まだまだ観たいリストは減らない。観たいと思うものを片っ端から登録しているが、今現在で300本くらいある。仕事をリタイアでもしない限り減りそうもない。となれば、面白い映画を効率的に選んで観たいと思うが、それはもっぱら口コミに頼ることになる。誰かが観て面白いと思うものを観ていけば、ハズレる心配はない。ちなみに経験上、「予告」は当てにならない。予告を観て面白そうだと思って観てもハズレることは結構ある。その点、口コミは精度が高い。まずハズレることは少ない。
その口コミ、あるいは世間の評判であるが、ハズレることはないものの、「期待ほどではない」というのは多々ある。めちゃくちゃ期待して観たものの、確かに面白かったが、期待したほどではなかったというのが多々あるのである。昨年は、『トップガン マーヴェリック』が大ヒットした。知人の中には何回も観たという者もいる。私も続編の製作を知って、前作をわざわざ観直してから観に行ったほどである。確かに面白かった。ストーリーもそうだし、映像の迫力も然り。されど私の個人的年間ベスト10 では8位である。
なぜ、面白いと勧められた映画がそれほどでもないと思ってしまうのだろうか。それは人それぞれ感性が違うのだから当然と言えば当然である。先月、『勝手にしやがれ』という映画を観た。名画と名高いフランス映画である。しかし、これもそれほど面白くはなかった。なんでこれが名画と言われているのか。それは即興演出や手持ちカメラでの街頭撮影など、当時の劇場映画の概念を打ち破る技法で製作され、後の映画界に大きな影響を与えたということもあるらしいが、要は当時は斬新であっても、それが一般化すれば当たり前になる。そういう時代の影響もあるかもしれない。
一昨年は、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が大ヒットし、邦画の記録を塗り替えた。確かに面白かった(個人の年間ベスト4である)が、個人的には原作漫画の方が遥かに良かったし、正直言って漫画の方は涙腺が崩壊してしまった。だが、映画の方はそれほどでもない。「ストーリーを知ってしまったから」ということもあるかもしれないが、原作漫画は読み直しても感涙なので、映画の問題である。なぜ、そういう違いが生まれるのだろうと不思議に思う。その理由がわかれば、他人のオススメ映画から適切に自分にヒットするものが選べるかもしれないと思ってみたれする。
逆に自分が自信を持って勧めたのに、他人にそれほど受け入れられないというのもある。『ちはやふる』は2017年の個人のベスト1であるが、勧めた友人には怪訝な顔をされてしまった。2022年のベスト1は『浅草キッド』であるが、これも然り。多分、勧めた相手は観ていないと思う。伝え方の問題もあると思うが、こういうことは珍しくない。だから、趣味の話になって、当然の如く「最近観た中で何が良かったですか」と質問されると、当惑してしまう。どうせ怪訝な顔をされて終わるなら言いたくないと思ってしまうのである。
残念であるが、人それぞれヒットポイントが違うだろうから、オススメ映画を聞くのもあまり意味はないという気はする。『マチネの終わりに』という映画は、原作小説もあるが、共に個人的には心に残る作品である。なぜ、この小説・映画がいいのかと考えると、ストーリーが良いのは当然だが、「自分の似たような経験を刺激される」というところが大きい。過去に好きだった女性と時間差のすれ違いがあって、今でも人生最大の失敗と悔やんでいるが、その記憶が刺激されるのである。そうすると、ストーリーだけでなく、それが余計に心に染み渡ることになる。
人は経験によってその人自身が彩られていくところがある。考え方や感性もそういう経験によって形成されていくところがある。だから若い人と歳をとった人の考え方が違うのも当然であるし、人生で何に重きを置いているかによっても違う。人に何かをして喜んでもらえることに喜びを見出す人もいれば、他人のことはお構いなくひたすら自分の事だけを求める人もいる。価値観が違う相手を自分の価値観で評価しても意味はないし、虚しいだけである。当然、そういう価値観にヒットする映画もそれぞれという事になる。「勧められたけどぜんぜん面白くなかった」というのも当然なのである。
しかし、だから「人のオススメ映画は当てにならない」とは思わない。やっぱりその人が面白かったというものは、それなりに面白かったりする。だから『トップガン マーヴェリック』も『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』もベスト10に入っている。そして、数百本の「観たい映画リスト」の中からハズレを引かないためには、やっぱり人のオススメは参考になるのである。ただ、あくまでも自分の参考であり、人の参考に押し付けたいとは思わない。やっぱり自分の心に大ヒットした作品を「ふ〜ん」で終わらせてほしくはないと思ってしまう。
「人に勧められても人には勧めたくない」とわがままにも心密かに思うのである・・・
Alfred DerksによるPixabayからの画像 |
【本日の読書】
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