2022年12月4日日曜日

分け合う世界の理想

製造業100社調査――中国調達「下げる」5割 台湾有事懸念、代替先は9割日本、キリンやOKIが備え(分断・供給網)

米中対立の激化などを受けて企業が部品などの調達で中国に頼らないサプライチェーンの構築を急ぎ始めた。日本経済新聞の主要製造業100社への調査で、5割の企業が中国比率を下げると回答した。代替先として9割が日本を挙げた。台湾有事や「ゼロコロナ」政策で中国リスクが高まっている。供給網の機能不全を回避するため、企業が備えを本格化しつつある。

2022/12/02  日本経済新聞

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 グローバルにビジネスを展開する企業にとって、今や中国は重要な拠点となっているが、その中国依存度を下げようという動きがあるようである。台湾有事など、「まさか」とは思うものの、この頃まことしやかに囁かれているし、同じように「まさか」と思っていたロシアのウクライナ侵攻が現実化したこともあり、「まさか」ではなくなる可能性もあるのかもしれない。尖閣諸島は最近ニュースでは騒がれないが、中国のプレッシャーは相変わらずのようである。なぜ、広大な領土があり、資源もある中国がそんなにガツガツするのだろうかと思う。


 中国に限らず、ではあるが、人類の戦争の歴史は資源・領土の分捕り合戦だろう。その歴史を愚かしくも繰り返している。欲張るのは人間の本能みたいなものであるし、個人レベルでも「もっともっと」は至る所で散見される。私の元勤務先の社長は、突然会社を売却して数億円のお金を手にしたが、社員8名に対して支払った退職金は合計で400万円。無いならともかく、億も手にしてそれかと思う。しかも、会社が高く売れたのは社長の経営能力ではなく、私を中心とした社員の働きによるものであるから尚更である。0をもう一つつけてもバチは当たらないが、本人は独り占めして平気なようである。


 中国も今や世界第2位の経済大国。なのにまだ領土が必要なのか、台湾や日本だけでなく、インド・ベトナム・フィリピンなど周辺国とも火種を抱えている。冒頭の記事の通り、日本企業が中国からシフトすれば、中国にとってもダメージは大きいし、日本企業もコストアップの影響が出るという。お互いにLose-Loseの関係になる。無いならともかく、世界の他の国に比べれば持っているのであるから、少しぐらいは譲れないものだろうかと思う。そうすればWin-Winの関係になれるのに・・・


 「奪い合えば足らぬ 分け合えば余る」というのは、あいだみつおの言葉であるが、まさにその通りだと思う。エレベーターも我先にと降りるのではなく、みんなが降りる間、ボタンを押しておき、自分は最後に降りる。その間、ほんの数十秒である。譲られた方は気持ちがいいし、同じオフィスビルであれば、いつしかみんながそうするようになったりする。我が社が入るオフィスビルのエレベーターでも基本的に階数ボタンの前に立った人は自然と皆やっている。たまに他所のビルで真っ先に降りていく人に出会うと驚くくらいである。


 ウクライナの紛争にしても、ロシアが危機感を抱かなければクリミア半島の維持に汲々とすることもないだろう。NATOなど本来はワルシャワ条約機構の解体と合わせて解散すべきであったのに、まだ勢力を保っている(と言うか、むしろ拡大している)。経済的な繋がりはともかく、軍事的な繋がりは相手国に対して脅威を与える。そういうものを排除すれば、ロシアも安心して欧米社会との繋がりを保てる。ロシアの天然ガスは安定供給されるだろうし、物価も当然安定していただろう。今からそうしようと思えばすぐにできるはずであるが、そんな声は聞こえてこない。


 もともと世界は強欲な白人がいなければもっと平和だっただろうと思う。日本だって無理やり開国させられる前は、世界に迷惑をかけずに社会を維持していたわけである。それが無理やり開国させられ、不平等条約を結ばされ、大国の圧力の下、日本は大陸進出を進めたのである。奪い合いの世界に無理やり参加させられた結果は惨憺たるものであったが、その教訓を生かして平和裡に生きようとしても、世界は油断すればすぐに奪いに来る。そんな事実を『戦うことは「悪」ですか サムライが消えた武士道の国で、いま私たちがなすべきこと』(葛城奈海著)という本では明らかにする。


 この本の女性の著者は、日本政府の弱腰の姿勢を批判し、「日本に男はいないのか」と勇ましく問う。しかしなぁと個人的には思う。分捕り合戦の世界で勇ましく渡り合うのはいいが、それは結局、「奪い合えば足らぬ」世界に参加することである。かと言って、1人だけ「分け合えば余る」と言っていても、それは結局「分け合えば」の話であり、今の「奪い合い」の世界では1国だけで唱えていても踏み躙られるだけである。そんな中では、「郷に入っては郷に従え」となるのもやむを得ないのかもしれない。


 どうすれば「分け合う世界」に移行できるのであろうか。日本が「奪い合い」の世界から脱落したのは敗戦が原因。それも良し悪しであるが、結果的に世界の覇権国より「分け合う」世界に近いのも事実。そうした痛い目に遭わないと実現できないというのも嘆かわしいが、世界の国がみんな弱腰になれば、「分け合う」世界に近づくようにも思う。積極的に譲りあうことができないのなら、弱腰もまた一助である。グローバルな分け合う世界は遠いが、千里の道も一里から。個人として分け合う世界に一歩でも近づけるよう、日々の生活の中で心掛けたいと思うのである・・・




【今週の読書】

   





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