2022年8月3日水曜日

親の説教はなぜうるさいのか

 我が家の息子は高校2年になった。身長は私よりも既に高くなり(体重ではまだ負けていない!)、体はすっかり大人である。さらに高校1年時にもう彼女ができたが、私よりも早い。私よりも明るい性格で、家庭でもよく話をするが、それでも子供の頃からすると口数は減ってきている。いつの間にか自分なりの意見を言うようになっているし、男の子であれば誰でも成長するに従って親離れをし、昔は絶対だった親の考えに反発もするようになる。それは極めて健全な成長過程であると思う。

 体の成長に伴い親に対しても意見を言えるようになる。そうすると、口うるさく言われた事に従わないということができるようになる。親が口うるさく言う事といえば、「勉強しろ」ということが筆頭になるだろう。親によっては、就職先や結婚相手なんかについても意見を押し付けてくるかもしれない。親子対立はドラマの構成要素にもなるくらいだから、大なり小なりどこででもありうることだろう。なぜ、親の意見は子供に受け入れられにくいのであろうか。

 それは両者の「経験値の差」によるところがまず大きい。親は一通りの人生を歩んできている。進学、就職、結婚・・・当然、成功もあれば失敗もある。自分の経験を子供に伝え、「正しい人生」を歩めるようにしてほしいと思うのは親として当然である。しかし、子供の方はそんな経験などない。勉強などわからないし面倒だしとなればやる気も出ない。学校の成績が悪いからといってどうなるのか、大学のレベルが低いからと言ってどうなのだと思うばかり。実体験として経験していないから親の言うことを理解できないし、しようとも思わない。

 就職した会社が学歴尊重の会社であれば、やっぱりもっと勉強しておけば良かったという後悔に結びつき、自分の子供には勉強させようと思う。倒産など経験すれば、やっぱり安定した公務員がいいとなる。自分の直接の経験でなくても見聞きした情報でも経験は経験である。結婚は、最初は恋愛モードで突っ走るが、やがて互いの育ちや価値観が顕になる。それを経験していれば、結婚に関しても親はひと言言いたくなるが、恋愛モード100%の子供の耳には入らない。まぁ、結婚の現実を知ってしまうと、結婚する若者が余計減ってしまうかもしれないから、それはそれでいいのかもしれない。

 すべては「経験値」からくる考え方の相違である。経験があるのとないのとでは必然的に違いがある。特に失敗経験は、同じ轍を踏まないという意味でも大きな経験値である。子供に同じ失敗はさせたくないというのも親心。ついつい口うるさくなったりすることもある。勉強をしなければならないというのは、子供もある程度理解できるが、「どの程度」というのは経験していないだけにわからない。さもなくとも勉強嫌いだったりするとよけいに拒絶反応が高くなる。しかし、親が経験した「勉強しない不利益」を実感できたら、勉強嫌いでも机に向かうかもしれない。

 そう考えれば、子供に親の考えを押し付けようと思ったら、まずは自分の経験談を語るところから始めないといけない。自分はなぜ子供がそれをやることが必要だと思うのか。その根拠をきちんと語れば、子供も親の言う事を真剣に聞くかもしれない。ただ、そこでその親の考えが正しいのかという問題もある。それは経験値だけに、「経験していない事はわからない」という限界である。未知の世界については親も確たることは言えない。そこから保守的にリスク回避的な発想になることもある。

 例えば、今の時代、大学に行くことは当たり前に近くなっている。当然、親も子供に大学くらい出ておけと言う。しかし、世の中当然ながら大学を出ていない成功者もごまんといる。私の同級生でも大学に行かずに成功している者が少なからずいる。しかし、大学を出た自分は「大学を出ずに」世の中を渡っていく術を知らない。ゆえに、子供にはやっぱり「大学へ行け」というアドバイスになる。子供の立場からしたら、親のそういう経験値を加味した上で言われた事を判断する必要がある。

 私が高校を卒業して以来、常に頭にあったのは、今で言うメンターが欲しかったということ。大学にしろ、就職先にしろその時点でアドバイスが欲しかったと思う。父は中卒で働いてきたため、大学や就職という点ではアドバイスをもらえなかった。大学はともかく、就職先については、銀行以外にももっと広く目を向けてみるのも良かったと思う。いろいろと経験値を積み重ねてきたゆえ、息子がいずれ就職となったときはそれなりにアドバイスできるのではないかと思う。どこに就職しろとまでは言わないが、少なくとも考え方は伝授できるのではないかと考えている。その時は、その根拠も伝えるつもりである。

 子供のためを思うなら、しっかりと伝わるようにモノを言わないといけない。ただ押し付けるのではなく、受け取ってもらえるようにしないといけない。自分の経験値というボールを取りやすいところに投げたいと思うのである・・・


Gerd AltmannによるPixabayからの画像 





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