2022年4月4日月曜日

現代の同棲

 知人の娘さんが同棲したいと言い出したそうである。母親は大反対。父親である知人も内心は反対であるが、真っ先に母親が反対の声を挙げたのでとりあえずは態度保留状態らしい。両親とも私とはひと回り上の昭和世代。真っ先に浮かぶのは、「何で結婚しないの?」という疑問。私も同じ感覚なのでよくわかる。同棲となれば、男には都合が良いが、女には不利との感覚が残っているのが昭和世代。女性の婚前交渉はタブーというかつての感覚がかろうじて理解できる世代である。

 頭を抱える知人。他人事だから冷静に聞ける私。しかし、娘を持つ身としては同じ。自分だったらどうするだろうとふと考える。確実に言えることは、反対しても火に油を注ぐだけだということ。恋愛は反対されてもそれで火が消えることはないということは、「ロミオとジュリエット」を筆頭に古今東西枚挙にいとまがない。だから、もしも娘がどうしても自分の気に入らない男を連れてきたとしても、頭から反対することだけはしないでおこうと今から決めている。

 そう考えると、一体どんな男だと気に入らないのだろうかと考えてみる。まずは無職のチャラ男だろうか。しかし、無職であったら娘も選ばないかもしれないという希望はあるが、「イマドキの」男はみんなチャラ男に見えてしまう気がするのはどう我慢しようかと思うと悩ましい。年の差がある場合も不快感が湧くだろう。特に娘より私との年齢差の方が近かったらと考えると気が遠くなる。こっそり跡をつけて夜道で襲うかもしれない。マザコン野郎も許しがたいものがある。まだまだ列挙できそうであるが、やめておくとする。

 そもそも親が子供の結婚に反対する理由は何だろうかと思う。基本的に親は子供に幸せになって欲しいと願う。だから、子供が幸せになれそうな相手だったら反対はしないだろう。それは男であれば相手の職業だろうし、女であれば家庭的なところがあるといったところであろう。親には自分の「経験」というものがある。二十代の頃にはわからなかった世の道理というものがわかっているが、子供にはわからない。そこから必ずしも「愛こそすべて」というわけではないという「現実」がわかっている。そのギャップこそが対立の元になる。

 昨年、実施された「親に反対された相手と結婚した男女185人を対象に実施した調査」によると、「両親共に反対」という割合は32.4%だったのに対し、「母親だけが反対」という割合は半数以上の51.9%にも上ったそうである。件の知人の例もその典型というわけである。ちなみに反対の理由の第1位は「相手の収入が十分でない」(22.7%)で、第2位が僅差で「態度や性格が気に入らない」(22.2%)だったという。知人の奥さんは、正確に言うと「同棲に反対(要は結婚しろ!)」ということだから、ちょっとニュアンスは異なるかもしれない。

 「同棲」という言葉には、どこか甘美な響きがある。それは「神田川」のようなフォークソングに歌われた世界であり、当時小学生だった私からすると、漠然と憧れる大人の世界の印象が強い。どちらかと言うと、「男にとって都合がいい」という印象があるが、実は件の知人の場合は、乗り気なのはお嬢さんの方らしい。曰く、「そこで相手を見定めて良かったら結婚する」という。甘く甘美な世界は今は昔であり、現代は極めてシビアな選別の場なのかもしれない。

 母親と口論となった知人のお嬢さん。「結婚すべき」と説くお母さんに対し、「江戸時代かよ!」と賜ったらしい。せめて昭和か大正だろうというツッコミは抜きとしても、現代っ子の感覚はまた我々のそれとは当然違う。もしも娘が「同棲したい!」と言い出したらどうするだろうか。相手には目を瞑り、「娘の人生だから」と思って何も言わないでおく方が無難なのかもしれない。「娘が幸せになるのであれば、その形は問わない」と今から覚悟を決めておくしかないのかな、と思うのである・・・


Arek SochaによるPixabayからの画像 

【本日の読書】
 


1 件のコメント:

  1. 私の友人知人の子供たちもそうだけど、
    最近の子は「結婚前に同棲」は全く珍しくないです。
    むしろ同棲せずにいきなり結婚の方が珍しい。
    私達が若い頃の普通と今の普通は違うってことを
    受け入れないと。
    あと、今どきの子達は彼氏彼女の家に普通に泊まります。
    そのうち娘さんも彼氏の家に泊まったり、
    彼氏が遊びに(泊まりに)来たりするかもね。

    「江戸時代かよ」と言われないように気を付けて(笑)

    まお@ジャスミン気分

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