東京オリンピックが閉幕した。金27、銀14、銅17の計58個のメダルは、日本史上最高だと言う。地元だから特に何か有利になるとも思えないが、開催国として関係者一同の力がみなぎったのだろうか、それとも特別な国の後押しがあったのだろうかと思ってみる。何にせよ、喜ばしいことである。当初は、主に資金的な理由からオリンピック誘致には反対であったが、決まってしまったものは仕方ないというスタンスでいた。実際にかかった費用は、当初の見積もりの倍以上の1兆7,000万円だったという。
しかし、開催の時期が近づき、いよいよチケットの販売も始まると事情が変わる。実家の母親が観に行きたいとつぶやき出したのである。前回の東京オリンピックの時、ちょうど私が生まれている。両親はともに無一文で田舎から出てきていて生活にゆとりなどなく、狭いアパートに住んで子育ても必死だったようである。父も夜遅くまで残業の毎日で、とてもゆっくりオリンピックなど楽しんでいる余裕などなかったそうである。なので今回はそのリベンジとなるわけで、「チケットが取れた」と知らせた時は大いに喜んでいたのである。
ところが、思いもかけないコロナ禍で無観客試合となり、残念無念。母もがっかりしていた。本来であれば、やはりバレーボール好きの叔母と一緒に行けるように、当日は運転手に徹するつもりで手はずを整えていただけに、無観客試合は私自身も残念であった。それでも母はあれこれとテレビで観戦していたようである。バレーボールのチケットが取れ、母親が楽しみにしている姿を見て、それだけで東京オリンピックはやってよかったと思う。共産党などは、閉幕まで「反対!」と唱えていたが、たぶん自民党政府が開催中止としていたら、開催賛成と主張したのだろうと思う。
私は、と言えば、もともとオリンピックにそんなに興味があるわけでもない。それでも柔道やレスリングや水泳なんかは(時間があれば)見ていたいと思ったが、悲しいかなそういうのんびりとした時間がなく、ほとんどチラ見した程度であった。「時間がない」とはビジネスマン的には禁句だが、正確に言えば、「優先順位を上げられない」である。平日は平日で、家に帰ってきてもやりたいことがある(それにチャンネル権もない)。週末はラグビーの練習があったり、実家に顔を出して料理をしたりという有様。裏でやっていたラグビーのブリティッシュ&アイリッシュライオンズの南ア遠征の各試合すらろくに観られなかったのだから余計である。
ブリティッシュ&アイリッシュライオンズは4年に一度イングランド、アイルランド、スコットランド、ウェールズの代表から選抜されて結成される「全イギリス」というべきチームで、前回のラグビーワールドカップ日本大会の覇者南アに遠征して、南アの代表チームと3試合、南アのプロチームと数試合対戦するという垂涎モノだったが、これも2試合(あと1試合は録画したまま)しか観れていない。大好きなラグビーですらその有様なのに、オリンピックに割く時間など取れなかったのである。まぁ、仕方ない。
続いてパラリンピックがあるが、これはもう論外。初めから見たいとも思わない。障害者スポーツが悪いとは思わないし、むしろ積極的に好ましいと思うが、だからと言って観たいということにはならない。障害があってもスポーツができるということは素晴らしいことで、それを地域に止めるのではなく、パラリンピックという最高の舞台を用意することは、障害者にも夢を与えるし、素晴らしいことだと思う。ただ、個人的にそれを観たいかとなると、興味がないというだけのことである。高校野球よりもレベルの高いプロ野球の方が面白いのと同様、どうせ「観るならオリンピック」なのである。
前回の東京オリンピックは、スポーツの秋10月10日に開幕し、ゆえにその日が長年「体育の日」として親しまれてきた。されど今回は真夏の祭典。何でそんなバカな時期にやるのかと素人的には思うが、それは最大のスポンサーであるアメリカのテレビ局の意向なのだとか。秋になれば自国のスポーツが目白押しとなるから、それを回避したかったのだとか。真偽は定かではないが、実際、大会費用の7割はアメリカのテレビ局が出しているらしいから、実に理屈に合った話であり、個人的には真実であると思っている。アスリートや観戦する人たちのことは二の次、それが資本主義の言うなれば欠点なのだろう。
それにしても毎回オリンピックのたびに思うのだが、オリンピックの1つの意義としては、マイナースポーツに陽が当たることではないかと思う。野球やテニスはそれだけで成り立つが、フェンシングやアーチェリー、カヌーなんかの競技はほとんど目にする事はない。そうしたマイナースポーツにも(多少の)陽が当たるのはいい事だと思う。そういう意味で、金メダルは取れたが、野球のプロ選手の参加は如何なものかと個人的には思う。サッカーもそうだが、ワールドカップクラスの試合がある競技は、なくてもいいように思う。その分、マイナースポーツにもっとスポットライトを当ててもいいのではないだろうか。
オリンピックは観戦できなかったが、母は孫(つまり私の息子だ)の野球をネット中継で観られて喜んでいた。今は高校野球は一回戦からテレビかまたはネット配信で試合が観られる。スマホの画像をテレビに転送して観ていたが、思いもかけぬ「観戦」に大喜びであった。残念ながら二回戦で敗退だったが、「次はいつ?」と聞く有様であった。まぁ、ラグビーに進まなかったのは残念だが、代わりに孝行してくれたので良しとしたい。やっぱりオリンピックよりも孫なのだろうか。あと2年は母を楽しませて欲しいと、楕円球ではなく白球を追う息子にエールを送りたいと思うのである・・・
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