2020年5月24日日曜日

部長の仕事

 小さいながらも会社で1つの部を預かっているが、部長の仕事とは何かと考えてみる。ちょうどそれを引き継ぎすることになったため、どんな心得でいてもらったらいいだろうかと考えたのである。よく、転職の笑い話で、「何ができますか?」と問われて「部長ができます」と答えたという話があるが、ではその部長の仕事とはなんであろうかということである。

 簡単に言えば、部長の仕事は「その部で行われるべき仕事すべて」ということになるだろう。「これとこれ」というような「部分」ではなく、「すべて」=「全体」である。まずはこの意識から持ってもらいたいと思う。部の仕事すべてとなると、小さい会社であれば可能かもしれない。実際、個人事業者などは社長がすべて会社の仕事をこなすわけであるから、十分可能である。ただし、大きくなればできなくなる。

 会社が成長するとは、仕事が増えること。だから人を雇うわけである。例えばある人が事業を始めたとする。初めは社長1人で。当然すべての仕事は社長の仕事である。やがて事業が軌道に乗り、仕事が増えてくると人を雇う。増えた仕事を雇った人に「代わりに」やってもらうわけである。「代わりに」やってもらうわけであるが、もともとは社長の仕事である。任せたができないとなれば当然自分でやらなければならない。「○○ができないから、できません」とは言えない。

さらに事業が大きくなれば、仕事の種類によって○○部などと部署を分けることになる。社長もすべてはカバーできなくなるから、各部に責任者を置く。これが部長である。責任者とは、言ってみれば小さな組織の社長であるわけで、その部の仕事はすべて部長が負うことになる。もちろん、部の規模も大きくなれば部長も1人ではできない。ゆえにそれを「自分に変わって」部下にやらせることになる。あくまでも「自分に代わって」というところが大事である。

「自分の代わり」であるから、ミスがあればそれは「自分のミス」になる。部の仕事はすべて部長の仕事であるから当然である。ところがこういう自覚がないと、引き継ぎを受けて部長の仕事は○と△というように「部分」で受けてしまうと、ミスがあっても部下を責めるだけになってしまう。自分のミスであれば、なぜ間違えたのか、どうしたら防げるのかと考えるが、他人の仕事だとそういう責任感も薄くなる。

また、「誰の仕事か決まっていない」仕事が出てきた時にも「他人事」になる。それが部の仕事であれば、担当者のいない仕事であればそれは部長の仕事である。部長がわざわざやるべきことでもなければ、部長が誰か部下に指示してやらせなければならない。しかし、意識の薄い「部分部長」だと、自分の仕事ではないから誰か適当にやれということになる。気の利いた部下が自分から手を挙げればいいが、そうでなければ最悪放置されることになる。実際、こういう「部分部長」はいる。

「部分部長」が発生する要因は簡単である。それまで部下の時代、「自分の仕事」をずっとやってきた人が、「自分の仕事」=「与えられた仕事、指示された仕事」という感覚であれば間違いなくこういう「部分部長」になる。後藤田五訓にあるように、「自分の仕事でないと言うなかれ」と言う感覚を持ってやってきた人ならこうはならないが、指示待ち族の人には無理である。指示はされていないが、これは自分でやってしまおうと言う意識の人なら大丈夫だろうと思う。

大企業になれば、数多の部下の中からこういう意識の者を選んで部長に据えればいいが、中小企業ではそうもいかない。「部分部長」を意識改革から変えていかないといけない。一々これは「あなたが誰かにやらせないと進みませんよ」ということをそれとなく伝えて動かさないといけない。あまり露骨にやると部下に部長の権威を示せなくなるから、配慮も必要である。ある程度根気が必要である。

 「優秀な部下がいない」と嘆く人も多いが、もともと優秀な部下などはなく、「優秀な部下を育てられる上司がいるかどうか」だと思っている。「優秀な部下がいない」と嘆いている人は、「優秀な部下に支えてもらわないと自分はまともな仕事ができない」と言っているのと同じである。それは自分に対する問いかけであり、戒めである。

 「部長の仕事とは何か」改めてそういうことを考え、次の「全体部長」を育てていきたいと思うのである・・・


Free-PhotosによるPixabayからの画像
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