たまたまであるが、取引先の営業マンと信金の担当者から「今の時期にどんなことをしたらいいですか?」という質問を受けた。ともに20代前半のビジネスマンであり、「どんな勉強をしたらいいのだろうか」とアンテナを張り巡らせているようである。私に聞いてくるくらいだから、もうあちこちでいろいろな人に同じ質問をしているのかもしれない。非常に意欲的でいいなぁと好感を抱いたのである。自分は彼らの年齢の頃、こんな事を考えていただろうかとふと思う。
とっさのことであり、私としては、「本を読むこと」と「今の仕事を一生懸命やること」と答えた。基本的にはビジネスマンとしては、「考え方」・「熱意」・「創意工夫」の3つが大事だと思っているが、その話をすると長くなるし、そういう場でもなかったので、もっと簡単なことに留めたのである。基本的にまずはそこからだと思う。本と言っても小説よりもビジネス系がいいだろう(ビジネス小説はもちろんOKである)。
私自身、どちらかというと乱読で、とりあえず片っ端から読んでみるというスタイルできた。ビジネス系もいろいろあるが、どちらかというと「経営者の本」系が好みである。世の中のいろいろな経営者が自分自身の経験を踏まえ、企業経営を語っているものなど、今の仕事のヒントになったりしていいなと思う所以である。逆に昔読んだ「経営コンサルタント」系の本は読まなくなってしまった。机上の理論的なものはあまり読んでも役に立たない。基礎知識として読むのはいいかもしれないから、そういう意味では若いうちに読んでおくべきなのかもしれない。
仕事については、昨今「働き方改革」なるものが盛んに言われていて、それはそれで悪くはないと思うが、それですべて語られてもと思うところもある。日本人には「滅私奉公」、「働かざるもの食うべからず」の伝統があり、どうしても「私」よりも「公」を優先するのが当然という空気がある。私も社会人になった頃は何よりもこれが嫌で、休みの日まで会社行事に引っ張り出されるのが苦痛であった。「仕事もできない新米」は、仕事を覚えるために残業するのなんて当たり前だったし、当然、残業代の申請などとんでもないことであった。つくづく、今は良い時代である。
しかしながら、人生のある時期、がむしゃらに働くのは良いことである。車の運転も免許取りたての頃に、たくさん乗って慣れてしまうと後は自然と体が運転を覚えてしまう。しかし、あまり乗らないと常時初心者の緊張が解けず、したがっていつまで経っても運転がうまくならない。挙句に「ペーパードライバーで運転できない」という状況になってしまう。それと同じで、若いうちに泣きそうになるくらい仕事を抱えてみるのも後の成長につながると思う。
信金の若手担当者は、私が元銀行員と知っていていろいろと聞いてくる。ささやかながら経験談などを話して聞かせると、身を乗り出して聞いてくる。自分もいつの間にかこんな話をするようになったのかという思いが脳裏を過る。ビジネスマンとして見ているという『ワールドビジネスサテライト』の他に、個人的に好きな『ガイアの夜明け』と『カンブリア宮殿』もお勧めしておいた。取引先のところに行った時、何も知識がないと事務手続きの話で終わってしまう。少しでも相手の事業に関する突っ込んだ話ができると相手からの信頼感も増す。
その昔、私の銀行員時代、経営難に陥っている会社を担当していたが、その時相手の社長さんからはもっと来て欲しいと言われたことがあった。月に一度のペースで伺っていたのだが、他の銀行の担当者は「どうやって借入金を返すのか」という話しかしなかったらしいが、私はひたすら「どうやって業績を上げるか」という話を社長としていたのである。そんなところが随分と役に立ったようである。「来て欲しい」と言われるようになれば、自ずから商売もやりやすくなるだろう。
【今週の読書】
0 件のコメント:
コメントを投稿