2018年6月14日木曜日

「投資は自己責任」の意味

「かぼちゃの馬車」という女性向けのシェアハウスを運営していた㈱スマートデイズが破綻した問題は、やはり同じ不動産業界に身を置く者として関心を持たざるを得ない。なんでも「確定利回り8%」、「30年完全家賃保証」などを謳い文句に投資家を集めていたらしい。そしてそれに対し、購入資金をスルガ銀行が融資していたが、自己資金をあるように装って不正に融資したと問題になっている。売却価格も裏で多額のキックバックがなされていたとかの話もあり、投資家はかなり割高で買わされたようである。

 当初は民事再生を狙っていたようであるが、怒り狂ったオーナーからの反発もあり、破産処理となったようである。約700人のオーナーはみな1億以上の投資(=借入)をしているようだし、この後どうするんだという不安と怒りがあるのだろう。その気持ちはわからなくもない。しかし、この問題考えてみるに、投資した人には気の毒であるが、やはり「投資は自己責任」の世界であり、いまさら感がある。債権者集会で、「8%を保証するって言ったじゃないか」という怒号が飛び交っていたが、「騙された」と怒っている人に対しては、それは「騙される方が悪い」としか言いようがない。

 スマートデイズは、「確定利回り8%」、「30年完全家賃保証」を謳い文句にしていたらしいが、そもそもであるが、それを何で無邪気に信じたのかと問いたくなる。子供ではあるまいし、言われたから信じたというのであれば、それはあまりにもお粗末だ。オレオレ詐欺は最初から相手を騙すつもりで実態のないことを言うが、スマートデイズは言ってみれば不可能とは言えないスキームなわけで、それは詐欺とは言えない。本当にそれでうまくいくかどうかを見極めるのは投資家の責任である。相手の言うことをそのまま信用するのではなく、自分で考えるなり第三者の意見を聞くなりいくらでも手は打てたはずである。

 例えば裏でキックバックを得ていたという話がある。その分、投資家は高い買い物をしていたわけである。ただし、不動産は自分の目で見て確かめられる。土地の値段、建築価格のおおよその値段は不動産屋にでも飛び込んで聞いてみれば素人でもわかる。自分でわからなくても、わかる人を探して意見を聞けばいいし、そもそも確信が持てなければ「やらなければ良い」。1億もの投資をするならそのくらいの手間暇は当たり前ではないだろうか。たぶんそれだけでも「随分高い」という感触は「簡単に」得られたはずである。
 
 また。スルガ銀行に対する批判もあるが、これもお門違いである。そもそもスルガ銀行としては、「申し込み通りに融資した」わけであり、非難されるものではない。自己資金があるように装ったというが、それは銀行内部の問題であり、外部の人間が「不正融資」というのは筋違いである。スルガ銀行の責任を問うのは間違いである。返済されないリスクのある融資をしてしまった責任は銀行自身が自分自身に対して負うものであり、借りた方が文句を言うのはおかしい。

 よくある架空の投資話やオレオレ詐欺は最初から騙す目的の詐欺であるが、今回の一件は純粋な投資話である。「30年完全家賃保証」と言われても、「相手が倒産したらどうなるのか?」と言う疑問はちょっと考えれば浮かんでくる。「確定利回り8%」とあっても、「その通りにいかない場合は?」ぐらいは考えるべきだろう。「いざとなったら売って返せるのか?」ぐらいはバブルを経験した我々なら当然考えてしかるべきことである。すべて怠って相手の言うことを全部鵜呑みにして、「騙された」はないんではないだろうか。それはもう怠慢以外の何物でもない。

 今は不動産市況も好調で、市場に売りに出ている物件はみな強気の価格設定である。我々はプロなので、日々採算を検討して選別して購入している。我々が高いと判断して見送ったものでもどこかの誰かが買っていく。お金があるならいいのだが、「借りて買う」のであるなら大丈夫なのかと思わざるを得ない。もちろん、それらは詐欺商品ではない。買うのは自由、買わないのも自由。すべて自己責任である。勧められても「買わない選択肢」を持っている以上、買う責任は買った人だけのものである。
 
 スマートデイズに投資した投資家700人がどんな人たちなのかは知る由もないが、改めて「自己責任」の意味をよくよく理解するべきである。そうでないのなら、投資そのものを「資格制度」にして、資格のないものにはさせないようにするしかない。スマートデイズに対して怒り狂っている投資家を見ていると、そんな子供扱いも仕方ないのかもしれないと思うのである・・・






【本日の読書】
 
    
  
 

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