この頃、娘の進路について食卓で話題になる。と言っても高校一年の今の段階では、「理系か文系か」のレベルである。以前から娘は「理系」の科目が好きなようで、なんとなく「理系」だろうかと思っているが、だから大学は理系になるのかとか、女の子はやはり文系の方がいいんじゃないかとか考えているわけではない。もう間もなく進路について決める時期だろうし、何より本人の事だから本人が選ぶ問題である。
では、例えば娘にどっちがいいのかと聞かれたらなんと答えようか。結論としては、「好きな方を選べ」となるが、その参考情報くらいは提供したいものである。と言っても根っからの文系人間を自負していた自分としては、「選択」した経験がないという弱点がある。高校生活で唯一真面目に取り組んで赤字を取ったのが化学。数学は「好きの領域」を出られず、生物地学は高得点をマークできたが、理系では傍流だ。選ぶ余地がなかったということでは、楽であった。
迷ったのは文系の中でどうするかだ。いちばんの希望はやはり文学部だった。本を読むのが好きだったし、できれば小説などを書いてみたいという思いがあったのである。しかし、それで食っていくまでの覚悟はなく、「授業料の安い国公立の大学」という条件下では、東大は無理だがそれ以下はレベルが低すぎるという問題もあって断念。結局、法学部に進んだのである。
しかし、法律の世界は当初思い描いたようなものではなく、学び進めた挙句の結論は、自分が進んでいきたいという道ではないというものだった。その選択は間違っていなかったと思うが、就職では銀行を選択した。それなら経済学部か商学部の方がよかったのかもしれないが、日本の場合それほど進路と専攻が密接に関連していない。銀行に入っても違和感を感じたことはなかったし、むしろ不良債権部門に移った後は、顧問弁護士と話す上で法律的な下地は大いに役に立ったものである。
理系の大学では実験が多く、授業に多くの時間を取られるという話はよく聞く。だから嫌だというのも、なんだかなぁという気がする。先日飲んだ友人は、理系の大学から総合商社に進み、今は家業の飲食店の跡を継いでいる。理系とは程遠いキャリアだが、それもまた良しだと思う。考えてみれば文系から例えば企業の研究職には行けないだろうが、理系からは幅広く進めるようにも思う。そういう意味では理系の方が進路は広そうである。
スティーブ・ジョブズは「点が線になる」ということを語っていたが、よほど強い希望を持っているのでない限り、大学へ進む進路のうち「理系か文系か」という問題はそれほど重要な問題ではないのかもしれない。将来の就職がどうのこうのもあるかもしれないが、現時点で自分の希望に沿って選べば良いとやっぱり思う。それがよくわからないというのなら、とにかく動いて探してみるべきだろう。本を読んでもよし、先輩を訪ねるのもよし。私の場合は、ヒントをくれたのは映画であった。
若いうちはいろいろと悩むものである。だが、経験上立ち止まっていても悩みは解決しない。進路でも恋愛でもなんでも、まずは動いてもがいてみるのがいいんじゃないかと思う。無限の可能性と漠然とした不安とを目の前にした、考えてみれば自分も確かに立っていたあの頃が今にして思えば懐かしく、そしてそこに立つ娘が羨ましい。
できることなら、そんな悩める子供にアドバイスの一つもできたら、自分の経験もよりいきたものになるのではないかと思うのである・・・
【今週の読書】
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