子曰。弟子入則孝。出則弟。謹而信。汎愛衆而親仁。行有餘力。則以學文。
曰く、弟子、入りては則ち孝、出でては則ち弟、謹みて信あり、汎く衆を愛して仁に親しみ、行いて余力有らば則ち以て文を学べ
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孔子の今回の言葉は、「家庭内」、「世間」でのありかたを説いている。家庭内では「孝=孝行」、世間に出ては「弟=目上の人に従うこと」が大事とされ、さらに(言動を)慎み信義を守り、広く人を愛し仁の徳を持つ人と親しくし、余力があれば書に学べと続く。極めて当たり前の内容で、異論を挟む余地はない。
しかしながら、では自分だったら何を大事にせよと説くだろうかと考えてみる。家庭内で大事だと思う価値観は何だろうかと考えてみると、それは「調和」であると思う。「家族とは幸せになるためのチーム」と仰った方がいたが、これぞ個人的には共感度大である。そうしたチームを機能させるためにも「調和」が大事だと思うのである。孝行もいいと思うが、「親の幸せが子の幸せ、子の幸せが親の幸せ」と考えると、孝行が子の幸せになるかどうかが大事である。
それは実は世間でも当てはまると思う。目上の人に従うのはいいが、たとえば会社において理不尽な上司の言動に振り回されて疲弊していては苦しいばかりである。天下の電通で若い女性が過労自殺したが、そうした状況で「弟」を説くことは適切ではない。年長者が常に「仁の徳」を持つとは限らないし、「弟」を問う前にまず相互に良い影響を与え合う関係があるかどうかが問われるべきかと思う。孔子の時代には「過労死」なんてなかっただろうし、もっと世の中はシンプルであったと思うから、そのあたりは時代により環境により変わってくるのかもしれない。
もっとも、「考」や「弟」が否定されるべきでないことは言うまでもない。
もっとも、「考」や「弟」が否定されるべきでないことは言うまでもない。
そもそもであるが、「考」も「弟」も儒教的なものの最たるものと言える。たとえば、国の存亡をかけた戦いの最前線で、親が急病になった司令官が看病のため戦線を離れるのは良しとされるらしい。日本的な感覚で行けば、「とんでもない」ことである。よく歌舞伎役者などが、(公演中は)親の死に目に会えないという覚悟をしていると聞いたことがあるが、これが「日本人的感覚」である。言ってみれば、「個人よりも大義を重んじる責任感」であるが、そうした文化の違いは当然ある。日本人としては、日本人的な感覚を大事にしたいところである。
「慎みて信あり、広く衆を愛して仁に親しみ」については、違和感がない。むしろ「清く正しく美しく」的にあたりさわりのない当たり前の言葉である。もちろん、そうした当たり前を基本とすべしという考え方なのかもしれない。そしてそれらに「余力があれば」、文を学べということである。ここでは「詩」・「書」・「礼」・「楽」の四経を指していたらしいが、まぁ現代に置き換えるのなら広く「学問」といったところなのだろうか。個人的には「学校を卒業したあとの勉強」と捉えたい。
「学校での勉強」は一方的に与えられるものであるし、社会に出て生活していく上での「基礎知識」、「教養」と言えるだろう。それはもちろん大事なのであるが、もっと大事なのはやはり「社会に出てからの勉強」だろう。それは人によって様々である。ある人にとってはキャリアアップに必要な知識だったり資格だったりするだろうし、趣味の教養を深めたいというものかもしれない。世の中の疑問について調べることかもしれないし、何かの役に立つかもという漠然としたものかもしれない。ともかく、自分で必要だと選んだ学問である。
「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるでもない。唯一生き残るのは変化できるものである。」とは、ダーウィンの言葉であり私の好きな言葉である。そしてその言葉通り変化するためには、常に学び続ける必要があると考えている。だからこの部分についての孔子の教えには、全面的に賛成したいところである。ただ、孔子は「余力があれば」としているが、これは余力のあるなしというより、「無理に時間を作ってでも」としたいところだ。若いサラリーマンが、電車の中で漫画を読んでいる(最近はスマホでゲームか)くらいなら、本の一つも読むべきだと考える。少なくとも子供達にはそう教えたい。
今の世に孔子が現れたら、自らの教えについてどう思うであろうか。儒教的考え方からすると、今でも「考」「弟」については変わらないのかもしれない。それは日本人流に変えていくべきところなのかもしれない。書に親しむところについては、今でも意見が一致するところかもしれないと思うのである・・・
【本日の読書】
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