2016年6月8日水曜日

『マイ・インターン』に見るシニアの働き方

毎週末、映画を観ることを至上の楽しみとしている私だが、先週末はロバート・デ・ニーロ、アン・ハサウェイ主演の映画『マイ・インターン』を観た。映画の感想はブログ(『マイ・インターン』)に譲るとして、ビジネスマンとしていろいろと感じるところがあったのでそれを記したい。

 主人公は、70歳になるベン。長年電話帳製作会社に勤めたあと引退。ところが奥様に先立たれ、悠々自適の日々もそれに物足りなくなる。社会との関わりを求め、社会貢献の一環でシニアのインターンを募集していた会社に応募し、採用となる。配属は、創業社長のジュールズの直属の部下。ジュールズは、若い女性ながら、ネットのファッション企業を創業し、今や社員数220名を誇る会社の社長。家族は専業主夫の夫と娘というすべて時代の先端を行く存在。ベンとのギャップがまた映画の見どころでもある。

 このベンであるが、その働き方が実に示唆に富んでいる。電話帳製作会社で部長まで務めたというが、偉ぶるところがなく、年下のしかも女性のジュールズによく仕える。最初こそ指示もなく「放置」されるが、いつの間にか周りの人に頼られる存在になっており、やがてジュールズにも頼りにされる働きぶりを発揮する。

 私も銀行員時代、ある期間子会社に出向していたことがある。そこでは、私のように若手の出向行員と、銀行の第一線を退いて転籍した元行員と、中途採用のプロパー社員が混在していた。隣の部署は転籍社員のグループで、ある時そこの担当者に依頼することがあって話をしに行った。その方は大ベテランの転籍組。私の依頼をめんどくさそうに聞くと、「そういうことは部長を通してくれ」と言うと、言うが早いか「部長、ちょっと」と部長を手招きした。ちなみにその方は職責上その部長の「部下」である。

 上司である部長を自分の席に呼びつけるなんて普通はあり得ない。だが、そこではそれが「普通」だった。そうした大ベテランの人たちは、銀行内では出世できずに転籍していて、年下の部長が彼らを束ねているのである。さすがに大ベテランは仕事は良く知っているので、部長も機嫌を損ねたくないから腫れ物に触るような対応である。見ていてあまりいい気はしないし、自分はそうはなりたくないと思ったものである。何より、そこでは通用するだろうが、他所では絶対通用しないだろう。

 年を取るといろいろと経験も積み、若い人のアラが目につくようになる。ついつい「上から目線」になりがちである。しかしながら、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ではないが、謙虚さは失ってはいけないと個人的には思う。少なくとも自分は保っていたい。映画ではあるが、ベンは同僚の若者たちとうまく歩調を合わせ、上司のジュールズには謙虚に部下として接し、部下としての役割を果たす。しかしながら細部に長年培ってきた経験が滲み出る。これが、シニアの働き方の見本ではないだろうか。

 本当に人格とビジネスマンとしての経験があれば、それは自ずと仕事をしていく上で現れるもので、部下として年下の上司に仕えていても、自然と周りの尊敬を集められるものであろう。そしてそれは、自席に部長を呼びつけるよりもよほど大きなものであろう。ジュールズの会社では、ネットベンチャーらしく社員はみんなカジュアルな服装だが、ベンは長年慣れたスーツにネクタイ姿で出勤する。その姿には、流行についていけない老人というよりも、己の信念と拘りを体現した威厳に満ち溢れている。

 いずれ自分もシニアとなる。その時の立場がどうなっているかわからないが、その時は大きな態度よりも内からにじみ出る威厳で周りの人たちの尊敬を集められるようにしたいと思う。そのためには、常にアンテナを張り巡らせ、自分の世界を広げる努力をし続けるとともに、誰にでも学ぶ謙虚な姿勢が必要だろう。自分より若い人には、ついつい物足りない部分に目が行きがちであるが、その人の持っている優れている部分もあるはずで、そういう部分から学べるようでありたいと思う。

 いつか自分でこれを読み返すかもしれず、白髪の頭を撫でながら(撫でる白髪が残っていればの話だが)、反省することのないようにしたいものである。そうして若者たちの間で、元気に働く。「ソウイウシニアニ ワタシハナリタイ」と思うのである・・・





 【本日の読書】
 
   

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