2016年3月21日月曜日

優しく教えて

毎週末には、近所のクリーニング店に自分の着たワイシャツなどを出しに行く。
いつも行くところは、スーパーの横に設置された狭い店舗で、中にはいつもパートのおばさんがいて、商品の受け渡しだけをしている。
その店に、先週から新しい人が入った。

その方はどう見ても六十代以降の年齢で、最初に見た時は、慣れない仕事に悪戦苦闘していた。
そして一週間経った今日行ったところ、その方が勤務していて、やはりあたふたと手際が悪く、指導していたなじみのおばちゃんは明らかにうんざりした様子だった。
客である私の手前、遠慮していたようであるが、それでも指導する言葉はきつくトゲトゲしかった。

おそらく、であるが、その新人さんはかなり覚えが悪く、したがって教える方は何度も同じことを説明させられ、挙句に不機嫌になっているものと思われた。
手順といっても、そんなに難しい内容ではない。
・来店したお客さんから預かり証をもらい、出来上がった商品を渡す
・持ち込まれた物を確認し、レジを打ってお金のやり取りをする
・新たに預かった物の預かり証を渡す
これだけである。
私であれば、半日もやれば基本作業は一通りこなせるようになるだろう。
だが、高齢で老眼でとあればアホかと責めるのは酷な気がする。

私であれば、根気強く懇切丁寧にわかるまで何度でも教えるであろう(たぶん)
イライラする気もよくわかるが、厳しく当たってもおそらくは改善しないだろう。
それよりイライラも本人に確実に伝わるだろうから、下手をすると萎縮してますますできなくなるかもしれない。
そうなると、悪循環である。

一体、人にものを教える時は厳しくするべきだろうか、それとも優しくするべきであろうか。

私が大学を卒業し、銀行に入って最初に配属された支店は、若手が暮らす独身寮では有名な厳しい上司のいる支店であった。
「仕事は盗むもの」という主義の人で、新人はほとんど放置状態。
周りの先輩は皆毎日何がしか怒られており、ピリピリしたムードが漂っていた。
毎日胃の痛い思いをする人もいて、「仕事が楽しい」などという雰囲気は微塵もなかった。

私は自分の性格として厳しくされるのは苦手である。
ついつい反発精神が出てしまう。
最初の頃は後輩や部下の指導も厳しくする時があったと思うが、今は優しいスタイルである。
その方が部下も萎縮しないし、わからないことは気軽に聞いてくるだろう。
「厳しくする派」からすれば、甘いと映るだろうが、毎日憂鬱な気分で会社に来てほしくないし、仕事はやっぱり楽しい環境でやった方が成果も上がるだろうと思うからである。

かつてある支店では、ミスが発覚したものの、部下が怒られるのが怖くて上司に報告できず、密かに処理したという話を聞いたことがある。
事なきを得たからよかっただろうが、処理しきれなくなったらその上司も当然責任を追及されただろう。「悪い報告が上がってこない」事を上司としては恐るべきで、それを防ぐにはやはり日頃からミスを気軽に報告できる環境を作っておかないといけない。
そうした視点が、上の立場に立つ者には必要だと思う。

クリーニングの集配のみを行う私の行きつけの店では、そんな大げさな事は必要ないだろうが、やっぱり気持ち良く働ける環境であった方がいいと思う。
部外者の私に何を言う権利もないが、せめてあの「新人」さんが独り立ちしたら、気楽に世間話なんか話しかけて楽しい気分になるお手伝いでもできたらと思う。

それまでは、毎週密かに応援したいと思うのである・・・



【本日の読書】

    

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