2014年3月16日日曜日

死の淵を見た男たち

川内、再稼働一番乗りへ 規制委、優先原発きょう決定
原子力規制委員会は12日、事実上の合格証となる「審査書案」を作成する優先原発を九州電力川(せん)内(だい)原発1、2号機(鹿児島県)とする方針を固めた。13日の規制委定例会で正式に決定する。川内は審査の重要課題となっていた基準地震動(想定される最大の揺れ)について、12日の会合で大筋で妥当と認められた。津波対策でも異論は出なかった。再稼働一番乗りが事実上決定した。
2014.3.13 産経ニュース
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 原発再稼働を目指す安倍政権。その動きが、静かに表面に出てきたようだ。いずれもっと脚光を浴びてくるようになると思うが、徐々に再稼働する原発が増えてくるのだろうと思う。

 個人的には原発反対であるが、先週はとくに震災からちょうど3年という事もあっていろいろとニュースに触れる中、また【死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日】という本を読んだ事もあり、その信念は一層強くなった。【死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日】は、当時の現場の様子が生々しく伝わってきて、迫力ある本である。

 原発再稼働を主張する側にも、いろいろと意見はあるようだ。やはり資源に乏しい我が国にとって、膨大な電力需要に応じるためには、ベース電源として必要であるという意見は理解できる。原発停止に伴って、代替資源の輸入増加により我が国の貿易収支も悪化(円安もそれに輪をかけている)している。長引けば我が国の“拠り所”でもある「経済力」にもダメージがあるのだろう。

 それに技術者問題というのもあるらしい。昨年世話役として関わっている「寺子屋小山台」で、講師としてお招きした東芝の方が、「“脱原発”となれば、若い人たちが原子力技術を学ばなくなる。そうすれば技術の継承ができなくなってしまうし、もしも中国・韓国で事故が起こっても我が国では対応できなくなる」とのご意見を伺った。
脱原発のその前に

 「技術が消失すれば、アメリカの技術協力も得られなくなるし、そうすると国内にある50tのプルトニウム(核兵器数千発分)の管理も難しくなる。技術は放棄できない。」との意見は、その通りなのだろうと思う。世の中で「脱原発」の声が大きくなると、こうした問題点を声に出して主張しにくくなるのは問題だ。しかし、無視できない指摘だと思うが、大事なのは「だからダメなんだ」というのではなく、「ではどうするか」と考える事だ。

 「技術消失」は確かに問題なのだろう。でもそれは「衰退産業」として若者に敬遠されないような仕組みを考えれば良いだけの事だろう。例えば、原子力技術を学んで技術者として就職した人には、国として給料とは別に「技術手当」のようなものを支給したらどうだろうかと思う。それで国と勤務先から同じ金額の給料と手当をもらえば、かなりの収入となる。そうした「職業」に若者はそっぽを向くだろうか。

 そもそも今でも原子力関連には膨大な税金が使われていると言う。地元自治体への補助金などを合わせると、「トータルコスト」では原子力発電も決して割安ではないと思うし、そうした補助の一部を「技術の継承」に向けるのは可能だろう。理論だけではダメだというのなら、どこか一カ所だけ原発を維持するというのもアリだと思う。一カ所で何機なのかわからないが、54機もある現状からすると、ずっと良いと思う。

 そもそも再稼働を主張する人たちは、福島第一原発の事故当時の緊迫した国内の雰囲気を忘れてしまっているのではないかと思う。あの状況下でも、「原発は必要だ」と思えただろうか。日本の国の1/3に人が住めなくなっていたら、それでも「原発は必要だ」と思うのだろうか。喉元過ぎて熱さを忘れてしまったのだろうか。

 福島の事故で、個人的に一番ショックだったのは、「使用済燃料棒」の問題だ。原発は稼働中の事故が怖いと思っていたのに、実はそうではないと思わされたのが、停止していた4号機の事故である。あれで心が決まったと言える。
 
 そもそも大きな問題というものは、右と左とどちらに行っても問題があるから、大きな問題となっているのである。であれば、どちらが理想的かと決めてその道を進むしかない。出てきた問題については、「だからダメだ」とせずに、「だったらどうしよう」と考えて解決を図る他ない。技術の継承も貿易赤字も温暖化もすべて「だったらどうしよう」と解決策が探れる問題だ。

 今後もその信念は貫いていきたいと思うのである・・・

     
【今週の読書】
死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日 - 門田 隆将  誰も戦争を教えてくれなかった - 古市 憲寿






 

 

 

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