2013年7月15日月曜日

ミレー

 中学1年の娘が夏休みに美術館へ行きたいと言い出した。何でも早くも夏休みの宿題が出て、それは「美術館へ行って絵画を鑑賞しレポートを書いて提出せよ」というものであるらしい。それを聞いて真っ先に思い浮かべたのは、山梨県立美術館である。

「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」 
 実は私は昔から絵画が好きで、確か中学の頃だったと思うのだが、山梨県立美術館へミレーの絵を見に行った記憶がある。その時いたく気に入って、ポストカードか何かを買って帰ってきた。たぶん、「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」だったと思う。そんな経緯から、それなら娘にもミレーを見せようと思った次第である。

 幸い、この週末は毎年恒例の桃狩りに行く予定を組んであった。調べてみると、いつも行くイチフル農園から山梨県立美術館はわりと近い位置にある。もう娘も桃狩りのあとは近くの公園で水遊びというわけにもいかない。桃狩りの後、どうするかと思っていたのでちょうど良かった。それにいつもほうとうを食べる「小作」の支店も美術館の目の前にあると言う事もあり、スケジュールが決まったのである。


山梨県立美術館 
 さて、訪れてみると非常にきれいな美術館で、私の記憶にはまったくない建物。建て替えたのかもしれないし、そもそも忘れてしまったのかもしれない。ミレーの絵は、山梨県立美術館所有という事で常設展として展示されている。

 パリ近郊のバルビゾン村という農村に住み、生涯にわたって働く農夫たちを描いたミレー。
「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」を始めとして、有名な「種をまく人」や「落ち穂拾い」の「夏」版などが展示されていた。静かな館内に展示されているミレーの作品を前にじっとたたずむ娘。

 小学校2年の息子はさすがに退屈そうで、「冬、凍えるキューピッド」の前で、そこに描かれたキューピッドを見て、「おちんちん!」と喜んでいる有り様だった。宿題では好きな絵を3点選んでレポートを書くことになっているが、娘は「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」、「冬、凍えるキューピッド」とモンティセリの婦人像を選んでいた。

冬、凍えるキューピッド
モンティセリ「婦人の肖像」 
 若干、好みは違ったものの、良い選択だと思う。個人的には、ミレーだと「晩鐘」が一番好きであるが、残念ながら本物はパリのオルセー博物館に行かないと観る事はできない。いつかパリに行くか、向こうから来るか、いずれにせよ本物を拝む機会はすぐにはありそうもない。

 絵を見ていると、本当に飽きない。いつまででも眺めていられる気がするから不思議である。なぜかと問われても答える事は難しい。もちろん、当時の貧しいフランスの農民たちの暮らしぶりが珍しいという事あるだろうが、それだけではない。才能ある画家によって切り取られた一瞬、一瞬に目が行くとでも言えるのだろうか。それはある面で写真にも通じているのかもしれないと思う。

 自分でも絵を描きたいとその昔思った。しかし、どう考えてみても自分にはその才能がない。ならば学ぼうと高校に入った時に決意。美術部の門を叩いたが、同時に入ったラグビー部の練習が忙しくて、一度も参加しないまま幽霊部員にもなれなかった。いまでもその気持ちがなくなったわけでもなく、「いつかそのうちに」と思う気持ちはまだ残っている。

 「いつかそのうち」という日は永遠にやってこないとわかっているが、子供の教育・教養という意味では、本物を見せるという事は必要なのかもしれない、と改めて思う。自分の趣味はともかくとして、また機会を作って行くのも良いかもしれないと思うのである・・・



晩鐘

落ち穂拾い




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