2012年8月30日木曜日

8月の終わりに

 夏休みも終わり、仕事に復帰した途端、月末業務に多忙を極める日々が続く。それにしても毎日暑い。夏だから暑いのは当たり前だし、夏だからこそ暑い方が良いのだが、とにかく暑い。クールビズで多少は緩和出来ているかもしれないが、それでも暑い。

 先日妻とも話をしたのだが、子供の頃は30度と言えば猛暑だったような記憶がある。30度越えが大きな山だったような記憶があるのだが、今は35度、36度は珍しくなくなっている。事実、今日は群馬で37度だったらしい。これも温暖化の影響なのだろうか。暦の上では秋だと言われても、何を言ってるんだという感じだ。

 しかし、場所によっては事情は違う。北海道は極端にしても、東京からほんの2時間ほどの長野県でもだいぶ事情は異なる。子供の頃、よく長野県は御代田の従兄の家に遊びに行っていた。そこではお盆が過ぎてしまうと、主要なイベントも終わり、すっかり寂しい雰囲気が漂ってくる。地元の学校の夏休みも20日頃までだし、朝晩はすっかり涼しくなってくる。

 従兄の夏休みの終わりとともに、秋の空気を身にまとって上野駅のホームに降り立つと、むっとするような熱気に、文字通り残っている夏を感じたものである。暑いとは言っても、もう蝉も鳴いていないし、鳴いているのはコオロギたちだし、虫たちは一足先に秋を楽しんでいるかのようである。

 考えてみれば、いつも夏は短いような気がする。梅雨が明けるのが7月中頃だとすると、正味1ヶ月程度だろうか。その前後は、暑いとは言ってもプールに入るような事はないから、やっぱり1ヶ月だろう。まあそのくらいでちょうどいいのかもしれない。

 さて、8月も明日で終わり。来年の夏休みはできたらまた海外旅行へ行きたいと考えているが、どうだろうか。そしてそのあとは9月。9月は9月で、また味わいがある。そろそろ果物の中で最も好きな幸水が店頭に出回っているし、さんまのおいしい季節でもある。それ以外にも食べモノがおいしい季節と言うのは、それだけで楽しいものだ。

 我が家では、この週末に、一夏受験勉強を頑張った長女の慰労を兼ねてビュッフェへ行く予定である。たぶん、この日は妻も口癖の「明日からダイエット」を連呼しながら食べるのだろう。この頃は過ぎゆく一瞬一瞬が凄く貴重に思えている。

 9月は9月で一日、一日を楽しみたいと思うのである・・・


【本日の読書】
部下はなぜ、あなたをそんなに嫌うのか? - 小山昇 新月譚 (文春文庫 ぬ 1-7) - 貫井 徳郎







2012年8月23日木曜日

仮面ライダー・フォーゼ

 本日は小学校1年の息子と映画鑑賞。観てきたのは、「 仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!/特命戦隊ゴーバスターズ THE MOVIE 東京エネタワーを守れ!」だ。大人的にはお金を出して観るのは、もったいなくて仕方がないが、息子のためとあれば仕方がない。

 私も子供の頃(たぶん小学校低学年頃まで)は、地元武蔵小山商店街にあった映画館によく東映マンガ祭りを観に行った記憶がある。春休みと夏休みと、それぞれ楽しみにしていたものである。今に至る映画好きの原点でもあり、だとすると息子にもそれを味わわせたい。そう考えれば、手間も料金も大したものではない。

  さてそうは言っても仮面ライダーはやっぱり郷愁をそそられる。私の頃は「仮面ライダー1号&2号」の時代。 一生懸命観ていたし、おこずかいを貯めてライダースナックを買ってもいた。毎回ワクワクしながら観ていたものである。 


 そんな背景もあって、息子が仮面ライダーを観はじめた時は(当時は仮面ライダーWであった)、一緒に観ていたものであるが、最近は観ていない。それに今の仮面ライダー・フォーゼは見るからにカッコ悪く、とても好感が持てない。バンダイでは子供たちの嗜好調査を行った上での自信作らしいが、ダイキン工業のキャラクターである“ぴちょんくん”に似ている事から、もっぱら妻には“ぴちょんくん”と言われてしまっているし、個人的にはとても応援する気にはなれない。しかも変身するのはどうやら高校生。これもなんかおかしな髪型のあんちゃんで、軽いノリがどうも肌に合わない。 

 さてそんなマイナス点は置いておくとしても、肝心の変身後の戦い方もどうかと思う。やたらベルトをガチャガチャと操作し、何やら武器をあれこれ装備し、次から次へと使い分けるのであるが、えらく忙しい。それに銃をぶっ放したかと思うと、剣を取りだしたりミサイルを撃ったりと、何だか己の戦闘能力にアイデンティティというものが感じられない。

 西部のガンマンは拳銃だし、スターウォーズはライトサーベルだし、ジャッキー・チェンならカンフー、そういうアイデンティティがまるでない。昔は、次から次へと襲いかかるショッカーの戦闘員を一人でなぎ倒し、パンチやケリを繰り出し、最後は必殺のライダーキックで締めていた。そうした必勝パターンこそが大事だ。スタン・ハンセンだって、最後は必殺のウェスタン・ラリアットで相手を倒して3カウントを奪っていたが、それこそ観客が最も観たくて、そして最も盛り上がるものだった。今の仮面ライダーにはそういうものはなさそうである。 

 もちろん、それはバンダイが子供たちにグッズを買わせようとしているからであり、それがベースになっているからどうしても武器が多くなる。変身ベルトだって、仮面ライダー1号&2号の頃は真ん中で風車がくるくる回るだけだったが、今はあれを差し込んだりこれを差し込んだり光ったりと何がなにやらわからない。これで良いのか、と正直疑問だ。 

 今日の映画でも友情だ、絆だと叫ばれていた。それでパワーアップしてしまうのも凄いと思うが、それがそんなに大事なのか。仮面ライダー1号も2号も、不本意ながらショッカーに改造人間にされてしまい、その事実を隠し、正義のためにショッカーと戦っていた。みんなで戦うのもいいかもしれないが、孤高の戦いも己を強くする。 

 また、昔は強敵を前にして、特訓をしてさらなるパワーアップを図っていた。友情でパワーアップするのもいいが、子供たちに努力して力をつける姿を見せる事も大事な気がする。これから運動会もあるが、本番で必要なのは「頑張れ~」という言葉よりも、「もう一回やってみよう」という地道な練習の繰り返しだ。 商売ももちろん大事なのだが、こういうヒーローモノにはもっと大事にしてもらいたいものがある。

 劇中には次の仮面ライダー・ウィザードが登場。引き継ぎにもそつがない。それはそれで良いのだが、次はもう少し実のあるモノを期待したいものである。その前に息子もそろそろ仮面ライダーを卒業する時期かもしれないが、どうだろう。卒業したら、もう観る事もないのだろうから、今のうちに楽しんでおいて欲しいと思うところである・・・

【本日の読書】          
2015年までは通貨と株で資産を守れ! - 中原圭介 新月譚 (文春文庫 ぬ 1-7) - 貫井 徳郎






2012年8月21日火曜日

川越水上公園

 夏休みは交代で取る我が職場。例年は競争の少ない7月に夏休みを取っていたが、今年は仕事の都合で7月に取れなくなり、この時期に取る事になった。と言っても、受験生を抱える我が家は旅行にも行けず、この夏はもっぱら日帰りレジャーである。

 そんな夏休み初日。子供たちのリクエストは「プール!」。と言ってもサマーランドや豊島園や昭和記念公園など周辺はもう何度か行っている。たまには違うところ、と考えて探したのが“川越水上公園”。実は近所でも“御用達”の所にしている人が意外に多かったのである。

 関越自動車道の川越インターから降りて程なく。なんと我が家からは30分で行けてしまう事が判明。サマーランドや昭和記念公園よりも、時間的にはずっと近い。しかも大人700円に子供200円、ファミリーチケット(大人2名・子供2名)だと1,600円と懐にも優しい。

 肝心のプールは、流れるプールに波のプール、ウォータースライダー3種に50メートルプールにその他プール、我が家には関係のない幼児用プール×2も加えるとかなりバラエティーに富んでいる。さらに飛び込み用プールまであって、なかなかである。

まだまだ夏の太陽と青空と雲を眺めつつ、浮輪につかまって流れるプールで流されているのはなかなかの気分。と言っても子供たちがあまり放っておいてくれず、長時間脱力放心とまではいかない。

縦50メートルの競泳用のプールを見つけると、娘は相変わらず「競争しよう」と言ってくる。まだまだ余裕で、いいよと受ける。クロールでスタートし、25メートル付近までは娘のスピードに合わせて加減していたが、25メートル付近を過ぎてから体が動かなくなってくる。


 最後は他の人に阻まれてしまったが、まともに50メートルで競争したらやばいと感じる。己の体力もここまで落ちていたのかと、愕然とする。娘はそのあと、一人で続けて3往復ぐらいして涼しい顔をしていたが、やはり体力で負けるというのは気分的な衝撃は大きい。ラッシュガードでたるんだ体は隠せても、衰えた体力は隠しようがない。

変わったところでは飛び込み用のプールだ。水面から1メートルくらいなのだが、園の中の船の形をした建物の中に水深3.5メートルのプールがあるのだ。

度胸試しに小学校1年の息子に挑戦させる。結構意気地なしなのだが、何とかなだめすかしてやらせる。ハラハラしていたのは親の方で、当人はあっさり飛び込むと足などまったくつかないプールを20メートルほど泳いで上がって来た。大人でもビビって足から飛び込んでいたから、まぁ大したものだとホメておいた。

お盆の時期は過ぎているし、割と空いているのではないかと期待していたが、やっぱり学生が多いようだった。高校生あるいは、大学生くらいのグループが結構目についた。友達同士、あるいはカップルでといずれでも楽しめるのだろうと思う。そんな若者たちの姿を見ながら、自分の過去の経験を思い出してみたりもした。

閉園時間の5時まできっちりと遊び倒す。子供たちはまだまだ遊びたそうだったが、閉園時間ではどうしようもない。また連れて来てあげると約束をして帰路についた。帰ってきて気がつけば赤ら顔。そう言えば日焼け対策をまったくしていなかった。まともに水面上で露出していた腕と顔が真っ赤っか。あとあと尾を引きそうである。

それにしても、やっぱりもう少し運動しないといけない。わかってはいるものの、ついつい「時間がない」と言い訳しているが、そろそろ何とかしないといけないかもしれないと、改めて考えさせられた一日であった・・・


【本日の読書】
新月譚 (文春文庫 ぬ 1-7) - 貫井 徳郎







2012年8月16日木曜日

尖閣諸島の守り方

北方領土にロシアのメドベージェフ首相が訪問し、続いて竹島には韓国の李大統領が上陸し、そして今度は尖閣諸島に香港の活動家が上陸、とここのところ我が国の周辺では寄ってたかって周辺国の攻勢が続いている。野党やマスコミは、政府が何をしたところで批判するだけだからいいだろうが、野田総理も心労が絶えないだろう。

このうち北方領土と竹島は、ロシアと韓国に取られてしまっていて、取り返すのはなかなか大変だろう。だが尖閣諸島は日本が実行支配している。
こちらは守らないといけないので、少々意味合いが異なる。

今回も活動家が不法に上陸し、逮捕したまでは良いが、さっそく中国は即時釈放を求めている。断れば前回の漁船の時のようにレアアースの禁輸だとか邦人の身柄拘束とかで圧力をかけてくるだろうし、即時釈放に応じれば、野党やマスコミは「弱腰」と無責任に批判するだろう。これもまた対応は大変だ。

そもそもは石原さんが買い取るなどと言い出したのが発端だろうが、この問題は事あるごとにいつまでも尾を引く事になるだろう。
相手が中国だけに対応は難しい。
どうしたら解決できるのか。

かつて鄧小平さんが、「次の世代はわれわれより賢明で、実際的な解決法を見つけてくれるかもしれない」と言ったが、我々はまだまだその賢明な世代ではないのかもしれない。
実際、中国が軍事力を使って上陸してきたら我が国は為す術はないだろう。
国際世論など蛙の面に何とやらだ。
安保があると言ったって、対中国でどこまでアメリカが軍事力に訴えるかは疑問だ。

アメリカは自国の利益になれば、イラク戦争のように国際世論を無視しても戦力を投入するが、日本の端っこの小さな島となるとどうだろう。
と言って、自力で守るのも今の日本だとまず無理だろう。
「東京に核を落とす」と言われたら、たぶん引きさがらざるを得ないだろう。
本気で自力で守ろうとするならば、たぶん元航空幕僚長の田母神さんが主張するように、核武装するしかない。だけど、そこまでの覚悟は日本人には無理だろう。

そこで個人的に考えたのは、“米軍基地化”というアイディアだ。
基地化と言っても本格的なものである必要はない。
通信施設程度で十分だろう。
米軍に賃貸して通信設備でも置いて、星条旗を掲げておくのだ。
そうすれば、さすがに中国軍は手を出せない。
活動家が上陸しても、米軍に引き渡せば良い。

米軍が即時釈放しても、それは米軍の判断であって政府は責任を逃れられるし、中国から抗議が来ても、「米軍に言ってくれ」で済んでしまう。
賃料など月々1万円くらいにしておけば、米軍の負担もない。
“場外”では騒がしくなるかもしれないが、それでひとまず安泰だと思う。

ずるい手法だが、あちらもこちらも立てようとすれば、仕方ないかもしれない。
何とか知恵を絞っていくしかないが、こんなアイディアはどうだろうかと思う。
うまい方法だと個人的には思うのである・・・


【本日の読書】

2015年までは通貨と株で資産を守れ! - 中原圭介 運命の人(一) (文春文庫) - 山崎 豊子





2012年8月11日土曜日

夏の日思うまま

そろそろ世間も夏休みが本格化しているようである。
通勤や日中の外出時に、リュックを背負った子供連れのお父さんをよく見かける。
工場などのように一斉に休みを取るところから、我々のように交代で休みを取るところ、あるいは取れないところ、いろいろあるのだろう。
たぶん、ピークは今週末から来週半ばまでのお盆だろう。

新幹線のディスカウントチケットもこの時期は使えない。
昔の丁稚奉公などは、休みは年2回の藪入りだけだったようであるから、今の時代は遥かに恵まれている。年2回どころか週休2日制だし、欧米の1ヶ月には及ばないが、夏休みは一応10日間も取る事ができる。先人たちの苦労の賜物と言えるが、誠にありがたい事だ。

連日のロンドン・オリンピックで世間は湧いている。
私も興味はあるのだが、ゆっくりテレビの前に座って観戦している暇がない。水泳・柔道・レスリングあたりの競技はゆっくり観たいのだが、優先順位をつけていくと睡眠時間が先に来てしまう。日本は、メダル数では過去最高とかなり頑張っている。しかしながら、金メダルが少ないのが
ちょっと残念である。

金メダルを取って欲しいと思うのは、何も一番だからという理由だけではない。
金メダルを取った選手が、表彰台に立って日の丸が揚がり君が代が流れる。
これが大事だと思う。まだまだ国家と国旗に背を向ける不届き者(特に教師)が数多い。
そういう者たちに、日の丸を背負って頑張った成果を見せつけてやってほしいと思うのである。

そうこうしていたら、韓国大統領が竹島上陸というニュースが飛び込んできた。かなり挑発的な行動だ。一説によれば国内に反日姿勢をアピールするという狙いもあるようだが、黙って見ているのも問題だ。竹島は敗戦のどさくさにまぎれて韓国に占領されてしまったのが問題の発端。うまくやられたとしか言いようがないが、もっと取り返す努力をしてもいいところだと苦々しく思う。

国際司法裁判所に提訴するという意見もあるようだが、国際司法裁判所は当事国双方の申し立てがないと審理が行われない。ところが、そんなところで公平に裁かれたら100%負けるとわかっている韓国は応じるはずもない。そこで終わってしまうのが日本の弱いところ。
アメリカみたいにルールを無視するのも問題があるが、ルールを変えてしまうのも方法の一つだ。日本はIMFをはじめとして、かなりの金銭的な貢献を国際機関に対してしている。札束攻勢で国際司法裁判のルールを変えてしまうのも欧米流のやり方でアリだと思うのだが、どうだろうか・・・

それにしても、「お上=権威」に頼ろうとするところはやっぱり日本人だと感じる。
相対で決着をつける事を良しとせず、「お上に決めてもらう」=「公平」という伝統的な感覚がここでも発揮されている。
直接殴り合って後に禍根を残すよりも、公平に決めてお互い恨みっこなしとする知恵とも言える。良い悪いはともかくとして、「和をもって貴しとする」我が国民性の現れだと思う。

報復として総理が靖国神社へ参拝に行っても面白いと思うが、そうすると今度は中国を刺激してしまうからうまくはない。経済協力を棚上げにするとか、もう少し積極的に「日本を刺激したらまずい」という対応を政府には期待したいところだ。

それにも増して、国民の間でももっと問題意識を持つべきだろう。韓流ブームなどと浮かれている場合ではないと言いたいところだ。目を転じれば、親日的な国がアジアにはたくさんある。台湾などはその筆頭だ。中国への配慮もあって政府が及び腰なのは仕方ないが、もっと関心を持ってもっと仲良くすべき相手だ。「汝の敵を愛する」のも大事だが、「汝を愛してくれる人」を大事にする方がもっともっと大事だと思う。

個人の信念として「反韓親台」は貫いて行きたいと、改めて思う。
そんな事につらつらと思いを巡らしてみた一人っきりの週末である・・・
    

2012年8月4日土曜日

MASTERキートン

 子供の頃から漫画少年だった私は、買い集めたコミックをほとんど実家に残してきた。たぶん3~400冊くらいはあったと思うが、今ではどうなっているのだろう。実家の倉庫の奥深くに、もしかしたらまだ眠っているのかもしれない。しかし、どうしても手放せなかったものがあり、それは今でも我が家の本棚に秘匿されている。

 その一つが「MASTERキートン」だ。主人公は、日本人を父にイギリス人を母に持つ平賀=キートン・太一。考古学者ではあるが教職には恵まれず、ロイズ保険組合のオプ(調査員)で生活の糧を得ている。妻はやはりイギリス人だが、今は一人娘を日本に残しイギリスに帰ってしまっている。

 そんなキートンだが、実はイギリスのSAS(特殊部隊)出身でサバイバルの達人という一面を持っている。人情味あふれるエピソード、繰り広げられる格闘とがミックスされて毎回ストーリーは展開されていく。

 キートンは、普段はおっとりしていて、娘の百合子にたしなめられる事もしばしばの優しい男だが、経歴が示す通り格闘においては部類の強さを発揮する。それも腕力を振り回すと言った類のものではなく、むしろ知恵を使ったものが中心。サバイバルも格闘も、身の周りにあるものを巧みに利用するという点で共通している。

 タイトルの由来は、研究者としては修士(MASTER)でいずれ論文を書いて博士号を取りたいと思っている部分と、かつてのSASの師匠から「戦闘のプロとしては甘すぎる。せいぜい達人(MASTER)どまりだ」と言うセリフから来ている。子供の頃には、「人生の達人(MASTER)」になれるよ」と言われた事もある。「ごく普通の人物がいざとなったら強い」というパターンは、水戸黄門から始って必殺仕事人等に至るまで日本人に人気のあるパターンだ(アメコミもスーパーマンなどのスーパーヒーローはそうかもしれない)。

 第1巻では「砂漠のカーリマン」という話が出てくる。ウイグルの砂漠地帯で地元民を怒らせてしまった日本の発掘隊。地元部族に砂漠に置き去りにされる。そこに巻き込まれたキートン。初めは砂漠にスーツで現れた彼をバカにしていた発掘隊の面々も、キートンのサバイバル技術で砂漠からの脱出を図る事になる。

 実はスーツには直射日光を避け通気性に優れているという利点があったのである。ウイグル語で「生きては帰れぬ」という意味を持つタクラマカン砂漠で、生き残ったキートンらを地元部族民は最後に讃えるというエピソードである。その他体格で遥かに上回るレスリング選手の学生をみんなの前でそれとわからせずに抑え込んでみせたり、人間は訓練された犬には勝てないと紹介した上で、その犬を巧みに素手でとらえてみせる。人質の交渉人になってみせたり、実力で救出してみせたりと、見せ場となるアクションシーンは数限りなく、男の子向けのエピソードには事欠かない。

されどそればかりではなく、人情味あふれるエピソードも数多い。特にIRAの女性活動家のエピソードはなかなか心を打つものがある。彼女は故郷に戻ったところを路上で射殺されるが、他紙は無残な死体で紙面を飾り紙数を伸ばす中、サンデーサン紙だけは彼女の普通の写真を載せる。やがて殺された女性活動家は、既に活動から手を引く事を決めていた事、反IRA勢力から無抵抗のまま射殺された事など事件の真相が明らかになる。

 その事実は、IRAの報復につながると案じるサンデーサンの編集長。しかし彼の元へ女性の母親が訪ねてくる。もう争いはやめようとみんなに訴えたいと。特ダネの大きさから他紙も交えての公表を提案する編集長に、女性の母親は唯一娘のきれいな写真を載せてくれたサンデーサン紙だけにしたいと答える・・・今にしてみれば時代を感じさせるエピソードだが、何度読んでもウルウルしてしまう。

 この漫画から得られるものは多い。男は強くありたいと思うものだが、その強さは必ずしも筋肉に比例しない。いつかドナウ文明の存在を証明したいという夢を追いつつ、学問を追及するキートンの姿を始めとして、ユーリー・スコット教授(娘の名前の元となった恩師)の逸話など学ぶ事の大切さを訴えるエピソードが散りばめられている。

 今また暇を見つけて読み返しているが、改めて名作だと強く思う。「漫画をバカにするなかれ」と言うのは私の子供の頃からのモットーであるが、漫画によって育まれるものは意外に多く、自分の子供にも読ませたい漫画は多い。さしずめこの漫画はその筆頭に置けるだろう。

 いつか子供たちに(娘は女の子だから無理かもしれないが)この漫画を読ませて、感想を語り合えたら良いだろうなと思うのである・・・