2011年12月8日木曜日

夢から醒めた夢

学芸会で「夢から醒めた夢」の演劇をやった長女と、その晩お風呂で話をした。
その中で、ストーリーそのものについて感想を聞いた。
ストーリー自体はとても面白かったと言う。
だからやっていても楽しかったのだと。

ストーリーは実は赤川次郎の原作らしい。
小学生の女の子ピコが、ある時幽霊の女の子マコと出会う。
交通事故で突然死んでしまったマコは、嘆き悲しむ母親にきちんとお別れを言いたいと言い、一日だけピコと代わってくれと頼む。快く応じたピコは、霊界空港で一日を過ごす事になる。

その空港は、白いパスポートを持った人(天国=光の国へ行く人)と黒いパスポートを持った人(地獄へ行く人)が集まって来ている。ピコの話を聞き、「マコが戻って来なかったらどうするのだ」とみんな心配する。いろいろやり取りがあり、最後は子供に戻るなとすがりつく母親と、約束は守らないとと思いつつ迷うマコと、それを見守るピコの場面となる。
(劇団四季バーションはちょっとウルっとする場面である)

最後の場面について、長女に尋ねてみた。
「お前がピコだったらマコと代わってあげる?」
長女の答えは「代わってあげる」だった。
「でも、戻ってこなかったら、お前は元に戻れなくなってパパやママに会えなくなるんだよ」と意地悪く問う。

続けて、「もしもマコだったら、約束通り戻る?」と聞く。
「戻る」と答える長女。
「でもそうしたらもうパパやママに会えなくなるんだよ」とまた聞く。
長女は答えを探しあぐね、黙ってしまった。
ちょっと意地悪く聞き過ぎてしまった。

だが私だったらどうするか、と逆に考えてみても答えは難しい。
ピコの立場だったとしたら、初対面やあまり親しくない人であれば断るだろう。
仕事柄か、リスクについては真っ先に考える。
この場合は相手が戻って来なくて、自分が元の世界に戻れなくなるリスクだ。
そのリスクと天秤にかけたら、ほとんど比較にならない。
ピコのように初対面のマコに譲るなんて、大人過ぎてしまう私には不可能な決断だ。

問題は親しい友人に頼まれた時だろう。お金だったら簡単だ。
貸して忘れられる相手に、返してもらわなくても困らない限度で貸して、あとは忘れれば良い。だが、生死がかかるとそういうわけにはいかない。
養うべき家族がいる身とすれば尚更である。

さらには、もしも相手が戻って来なかったとしても、その気持ちは痛いほどわかるし、それゆえに裏切られても相手を恨めない。自分が逆の立場だったら、ひょっとしたら相手を裏切るかもしれない。だからこそ、おいそれとは代われないのだ。

長女もそろそろいろいろな事がわかるようになってきている。
世の中には、学校の勉強のように、答えがすぐわからない問題もある。
誰かが正解を知っているとは限らない問題もある。
そういう問題は、自分自身で納得のいく答えを出すしかのである。
そんな問題に、少しずつ出会っていくのもいいかもしれない。

ストーリーでは、最後にマコが約束通り戻って来て、無事白いパスポートを手にして光の国へと旅立って行く。友情と友達を信じる事の大切さとを描いてハッピーエンドである。
今はまだ「最後はハッピーエンド」で良いだろう。
いずれ出会う答えのない問題に、逃げずに立ち向かえるように、少しずつ慣らしていってあげられたらと、親としては思うのである・・・


【本日の読書】

錯覚の科学 (文春文庫 S 14-1) - クリストファー・チャブリス, ダニエル・シモンズ, 成毛 眞, 木村 博江  フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた) - デビッド・カークパトリック, 小林弘人 解説, 滑川海彦, 高橋信夫






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