2011年1月14日金曜日

奢り奢られは世につれ

最近の世代は、他人に奢るとか奢られるという行為を非常に嫌うらしいと聞いた。
交際中のカップルでも割り勘で支払いをしていたりするらしい。
もちろん、悪い事ではないし、正直言って若い頃はお金なんてないんだし、見栄を張らずに割り勘にすればいいと思う。すなおに割り勘にできる今の若者を羨ましく思う。

私はと言えば、デートでは男がお金を払うものという風潮で育った。
残念ながら、デートの機会にはそんなに恵まれなかったが、それでも割り勘なんて自分からは絶対言い出せなし、そんな感覚は今でもある。ただ先輩にはよく奢ってもらったし、逆に後輩には奢った。そういうものだという感覚があった。

大学に入り、ラグビー部の門を叩いた私を迎えてくれた先輩たちもそうであった。
当時の我がラグビー部には実にうまいシステムができていた。
毎週試合後にみんなで飲みに行くのだが、学年ごとに分かれて行くような事はしない。
4年生を筆頭に3年、2年、1年と縦割りでいくつかのグループに分かれて行く。
そうして支払いはというと、ざっと4年:3年:2年:1年=6:3:1:0といった割合になっていた。
つまり1年はタダである。これが1年間続く。

1年は練習が終わると雑用がある。
ボール磨き、グラウンド整備、部室掃除等々。
上級生はさっさと帰ってバイトに行けるが、1年はそういうわけにもいかない。
そうした立場と懐具合を考えた、実に合理的なシステムだった。
先輩は後輩に奢る。いつしかそういう感覚が私の身に沁み込んだ。

奢るとなるとどうしても上下の感覚が生じる。
先輩と後輩、上司と部下、男と女。
男と女の関係は、男の願望だろう。
男は常に女より上でありたいと思うものだ。
今は対等を意識する風潮が強いようだ。
男女平等が定着し、女性も男と同じくらい収入があるから、奢ってもらって上から目線で見られるなんてとんでもないと思うのかもしれない。

そう言えば、我が大学のラグビー部も数年前に行った時、みんなタメ口で会話していて、上下関係がまったくわからなかった。それがいいか悪いかはわからない。
飲みに行った時のシステムはどうなっているのだろう。
あの良き伝統は今でも生きているのだろうか。

もうだいぶ前になるが、 H先輩と二人で飲みに行った。
帰る時に先輩が支払いをしようとした。
私ももう社会人で収入があったし、練習後の雑用があるわけでもないから、半分出そうとした。
ところが、H先輩に怒られた。
「お前がどんなに偉くなっても、俺の先輩にはなれないんだぞ」と。
私はありがたく御馳走になった。そんなラグビー部の体質が沁み込んだH先輩の事を今でも敬愛しているし、後輩である事を誇りにも思う。私も後輩たちにはかくありたいと常に思っている。

上下関係も悪くはない。
「奢る」という行為は、上下関係を表す一つの行為である。
対等意識が強い人にとっては、だから嫌なのかもしれない。
例えタダ酒でも上司となんか飲みに行きたくもないというのが、若者たちの気持ちなのかもしれない。それはそれでわかるのだが、何だかなぁという気持ちがするのも確かである。

今の学生たちはどうなんだろう。
タメ口聞いて、対等の友達感覚で先輩と付き合っているんだろうか。
今年はグラウンドに行こうと思っているから、是非そこらへんの風潮を掴んできたい。
もしもラグビー部にかつての伝統が残っていたら嬉しく思うし、残っていなかったらきっと寂しく思うに違いない。変わりゆく世の中にあって、変わってほしくないものの一つであると思うのである・・・



【本日の読書】
「フリー<無料>からお金を生み出す新戦略」クリス・アンダーソン
「超ヤバイ経済学」スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・タブナー

【本日の漫画】
「バガボンド33」井上雄彦
「ONE PIECE④」尾田栄一郎


     

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